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【ロボットのいる施設を訪ねて】第4回:HRP-2PやM-TRANなど
産総研製ロボットたちが待つ「サイエンス・スクエア つくば」

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全国各地のロボットが展示されていたり、デモを行っていたりする施設を訪ねて歩くシリーズ「ロボットのいる施設を訪ねて」。第4回は、独立行政法人産業技術総合研究所(以下、産総研)つくばセンター内にある「サイエンス・スクエア つくば」だ。産総研で研究や開発、もしくは開発に関わった複数のロボットやさまざまな技術が展示されている施設だ。毎週月曜日が休館日(祝日の場合は翌日の火曜日が休館)で、9時30分から17時までオープンしており、入館は無料。ここでしか見られないロボット系の展示も多く、ロボット好きならぜひ一度は訪ねてみたい場所となっている。

展示エリアに入ってすぐ右手にあるのが、HRPシリーズのコーナー。展示されているのは、シリーズの中でもレアな1台である「HRP-2P」だ。「HRP-2 Promet」(以下、プロメテ)はメカ・キャラクターデザイナーの出渕裕氏がデザインを手がけたことや、台数が多いことなどから、比較的見やすい機体である。しかし、そのプロトタイプのHRP-2Pは、ここにしか展示されていない。HRPシリーズのコンプリートを目指すには、サイエンス・スクエア つくばは外せない施設というわけだ。なおHRPシリーズは、ホンダのプロトタイプ「P3」をベースにした「HRP-1」、その制御用ソフトウェアを産総研製のものに変更した「HRP-1S」、そしてHRP-2Pとプロメテ(HRP-2)、第3世代プロトタイプの「HRP-3P」、Prometの後継機「HRP-3 Promet MkII」、青年女性型のサイバネティックヒューマン「HRP-4C 未夢」(リリースはこちら)、HRP-3の後継機で今年09月に発表されたばかりのシリーズ最新機種「HRP-4」(記事はこちら)というラインナップとなっている。

HRPシリーズのコーナーの反対側では、プロメテの小型版といった外見のゼネラルロボティクス株式会社の「HRP-2m Choromet」(以下、チョロメテ)や、タテゴトアザラシの赤ちゃんをモチーフにした株式会社知能システムのメンタルコミットロボット「パロ」などがある。

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そして、その隣には恐竜ロボットの「ティラノサウルス」がある。東京・北の丸公園内の科学技術館にある「パラサウロロフス」(記事はこちら)とともに2005年に開催された「愛・地球博」で常設展示されたロボットだ。共にNEDOが制作し、設計は産総研が担当、外見を株式会社ココロが担当している。全長は3.5m、体重は80kgと、7000万年前に棲息していた本物のティラノサウルスの3分の1のサイズとなっている。こちらは、常時首や尻尾を振るなど、動作しているのが特徴だ。

続いてお見せしたいのは、「筋電センサ」のコーナー。ここでは、その応用例のひとつとして、筋電によって操作する義手を展示している。産総研では、筋電が人によって異なるのはもちろん、同じ人でも測定部位の肌の湿り具合や季節、天候などによっても左右されやすいため、それらに影響されない、誰でも測りやすい静電容量性結合型のセンサを現在は開発しているという。ここでは、筋電センサを体験しやすいようにということで、手の筋肉を使って、鉄道模型の走行スイッチのオン・オフを行なえるデモを楽しむことが可能だ。

そして、直接的にロボットに関する技術ではないのだが、記者が個人的にもっと世の中で利用すべき技術として感じているのが、熱電発電の技術。温度差を利用して発電するという技術で、世の中、無駄に捨てられてしまっている熱はそれこそ余りある状況なので、もっとこの技術を活用すれば、省エネ化を進められるというわけだ。同施設で体験できる装置は手のひらを置くだけで、ランプを付けられたりするほど、わずかな熱で作動する。よって、自動車のエンジンや、ガスレンジや給湯器、PCのCPUなど、ありとあらゆる排熱を利用できるわけで、家電メーカーや自動車メーカーはもっと積極的に活用してほしいところ。もちろん、ロボットも長時間稼働させれば、モーターが熱を持つのはご承知の通り。その熱でバッテリなどに充電したり、すぐさまモーターを動かすのに使えば、より長時間駆動させられるというわけだ。

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ちなみに産総研製の熱電発電素材は、高温や酸化に強く毒性もないセラミックスの一種で(従来の材料は金属製で毒性や酸化などの問題があった)、コバルトの酸化物(Ca3Co4O9)とニッケルの酸化物(LaNiO3)の2種類を材料としている。ただし、発電量が少ないため、そのふたつを交互に接続して電気エネルギーを高くしており、そのためには接着剤もポイントだったという。

なお、同施設はふたつに別れており、奥にあるのが「スクエアII」。こちらにもロボット関連の展示が複数ある。まずは、合体変形ロボット「M-TRAN」(実際には、試作2号機の「M-TRAN II」が展示されており、愛・地球博には「M-TRAN III」が出展された)。モジュールで構成されるロボットで、組み合わせ方でさまざまな形態を作り出せ、外界の状況に合わせて変形(合体・切り離しもある)をして移動などを行なう仕組みだ。また、万が一故障したモジュールがある時は、それだけ切り離して再構成するといった仕組みも有する。

M-TRANの基本モジュールは、かまぼこ型ブロックが山の部分を向き合わせる形でバーでリンクしていて、モーターで稼働できる2軸を持ち、ブロックとブロックが最大で90度回転できるようになっている。別のモジュールとはふたつの底面と4つの側面(2ヶ所×2)の6ヶ所で永久磁石を用いて結合できる仕組みだ。切り離しは、形状記憶合金を用いて行う。また、モジュールには3個のCPUが搭載され、モジュール間の通信が行なえるようにネットワーク機能も持たされている。電池もモジュールごとに内蔵されているので、それぞれが自立動作が可能だ。変形の霊としては、四足歩行型からヘビ型(ほぼ1直線)に変わる様子も紹介されていた。なお、M-TRANとは、Mudular Transfomaerの略称である。

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最後に紹介するのは、「マイクロファクトリ」(詳細はこちら)。小さな部品は小さな機械で生産する、という思想のことで、生産機械や生産システムを小型化することで、機械そのものを作る資源や運転エネルギーが節約されるというわけだ。さらに、工場自体を小型化でき、建設コストや温度制御などの維持管理の面でもメリットが生じる。それに加えて、騒音や振動、排出物なども低減され、環境や作業者にとっても有益というわけだ。こうした考えが進んで将来的に実現すれば、工場で生産という制限からも解放され、事務所や個人宅、自動車内などでも生産できるようになるとしている。

このほか、画像認識に関する技術や、内視鏡下鼻内手術の訓練用の精密模型、光る有機ナノチューブ、体内埋め込み式補助人工心臓などなど、最先端の科学技術が好きな人なら誰もが楽しめる展示物やデモがそろっているので、ぜひ研究所直結の展示施設を堪能していただきたい。なお、事前予約ツアーが1日4回(10時、13時、14時、15時)、当日予約ツアーが1日2回(11時、16時)あるので、そちらを利用するのもありだ。

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