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TOP >  学術・教育 >  学術 >  記事2010年09月21日-a

産総研と川田工業が共同開発した新型ロボット
「HRP-4」、22日から名古屋工業大学で一般公開

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産業技術総合研究所(産総研)と川田工業株式会社(川田工業)は、新型の“働く人間型ロボット研究開発用プラットフォーム”「HRP-4」を発表した。共同開発の分担は、川田工業がロボット全般のハードウェア部分の開発を担当。動作制御ソフトウェアの開発は、HRPシリーズの生みの親である横井一仁氏を研究グループ長とする産総研知能システム研究部門ヒューマノイド研究グループ主任研究員の金広文男氏らが担当した。

9月15日に発表され、一般へのお披露目で最初となるのは、明日22日から24日まで名古屋工業大学で開催される第28回ロボット学会 学術講演会。基本は研究者向けの講演会だが、一般向けにHRP-4を含めた陸海空の50機ものロボットが展示されるほか、「はやぶさ」関連の展示もあり、無料で楽しめるイベントとなっている。

HRP-4は、2009年03月に発表された「サイバネティックヒューマンHRP-4C“未夢”」で培った、高密度実装技術を応用して開発。身長は151cmとHRP-4Cの158cmより若干低くなり、体重も39kgとHRP-4Cの43kgより少しだけ軽くなっている。物体の操作に適するように片腕の自由度が7軸と多いのが特徴で、全身の自由度の合計は34軸。

制御システムとしては、ハードリアルタイム処理を実現する機能を追加するための「RT-Preemptパッチ」を適用したLinuxカーネルをOSとして採用した。これにより、国際標準のPOSIX APIを用いた実時間ソフトウエア開発および近年一般的になったマルチコアプロセッサの有効活用も可能としている。

さらに、国際標準のRTコンポーネント仕様に基づいて産総研で実装を行ったオープンソースのソフトウェアプラットフォーム「OpenRTM-aist」(Open Robot Technology Middleware implemented by AIST)もミドルウェアとして採用。同ミドルウェアは、ロボットの要素機能をRTコンポーネント呼ばれる基本単位で作成し、それを多数組合わせることでロボットシステムを構築できるソフトウェア基盤技術「RTミドルウェア」を実装している。それによりさまざまな機能要素を通信ネットワークを介して自由に組み合わせられるようになり(従来に対して機器の本体内でのレイアウト上の制約が大幅に取り除かれている)、結果、軽量・コンパクトでなおかつ低価格を実現したというわけだ。なお、RTコンポーネント群には、HRPシリーズで培われてきた動作制御技術がコアロジックとして組み込まれている。

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そのほか、産総研などで開発したオープンソースのロボットシミュレーター「OpenHRP3」(Open Architecture Human-centered Robotics Platform 3)を初め、国内外の多数のロボットシステム用のソフトウェア資産を利用できるように設計されている点もHRP-4の特徴のひとつだ。システム設計ツールやデバッガ、シミュレータ、テンプレートコードジェネレータなどからなるRTミドルウェアに対応したロボットシステム開発支援ツール群の「OpenRTP」を使用しても開発も可能。さらに、音声認識・音声合成・対話制御などのRTコンポーネント群を提供する「OpenHRI」や、画像処理ライブラリ「OpenCV」なども利用できる仕組みだ(音声出力を2チャンネル備えている)。

そうしたオープンソースが採用された狙いのひとつに、等身大のヒューマノイドロボットの製作コストの高さを抑制することがある。等身大のヒューマノイドロボットは次世代ロボットの最終形態のひとつとして、少子高齢化の21世紀の日本を支えることを目的に開発が進行中だ。ただし、その搭載ソフトウェアの開発はロボットの運用タイプや開発機関ごとに進められており、それがコスト高騰の要因のひとつとなっている。また、開発機関・組織ごとに独自のソフトウェアのため、システム間のインターフェースの互換性や標準仕様も存在しない。そのため、ほかの機関で開発されたソフトウェア資産の再利用もスムーズにいかず、そうしたことがロボットの産業化の妨げにつながっていくというわけだ。そうした問題を解決するため、HRP-4では国際標準に準拠し、そしてオープンソースのソフトウェアやインターフェースを採用したというわけである。

また、2世代前の人間型ロボット研究開発プラットフォーム「HRP-2」がまだまだ高価であるという点もHRP-4開発の理由のひとつだ。さらにHRP-2は開発・発表からすでに8年が経過し、ロボット本体だけでなく、部品などの性能や仕様にも新しい開発テーマに対応することが難しい状況が出てきてしまっている。そのため、2010年仕様の新しい働く人間型ロボット研究開発プラットフォームが求められるようになってきていたというわけだ。

そこで、産総研は2006年から3カ年計画で産学連携プロジェクト「産総研産業変革研究イニシアティブ」の「ユーザ指向ロボットオープンアーキテクチャの開発」を実施し、その一環としてHRP-4Cを開発。その技術を応用して、2009年06月から、低価格な等身大の働く人間型ロボットの研究開発用プラットフォームの共同開発を産総研と川田工業による共同開発をスタートさせ、今回の発表に至っている。なおHRP-4の開発には、本田技術工業株式会社の特許も利用されており、HRP-4はある意味、ASIMOとは遠い親戚といえる形だ(第1世代の「HRP-1」は、ホンダのプロトタイプ「P3」がベースとなっている)。

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ハードウェア的な特徴としては、人と安全に協業するため、従来のHRPシリーズよりも軽量化・スリム化を実現する(軽量小型化・スリム化・低価格化でいて、研究開発用途として実用性に富んだ機能を備えていることを表すコンセプトとして、産総研では「スリム・アスリート」と呼んでいる)と同時に、腕の自由度を増やし、よりインタラクティブ技術の研究に適するように設計を見直している。さらに、ロボットに対する安全要求に配慮して、すべての関節軸には80W以下のモーターを採用。片腕の過半重量は0.5gとなっている。また、背面には小型ノートPCが搭載可能で、情報処理能力の拡張性にも配慮している。外見デザインに関しては、人との親和性を追求した形だ。デザインは、T-D-F代表の園山隆輔氏が担当した。

今後の予定としては、ヒューマノイドロボットの研究開発を促進するため、保守も含めたトータルな面で、従来のHRPシリーズよりも大幅な低価格を実現するとしている。川田工業で受注生産し、2011年01月以降の国内外の大学・研究機関向けに提供を始める予定だ。HRP-4は、間に1世代前の「HRP-3」はあるが、量産という観点からはHPR-IIの後継機といってよさそうである。

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