年末から受注生産を開始したヴイストンの新製品
ロボットカー・プラットフォーム「ビュートEV」
ものづくり・プログラミング学習用教材の車両型ロボット「ビュート(Beauto)」シリーズをリリースしているヴイストン株式会社。12月22日に、同シリーズの最上位機種として、1/10スケール・ロボットカー・プラットフォーム「ビュートEV」を発表、年末の27日から販売を開始した。車両制御学習や電気自動車、カーロボティクスなどの研究を対象としている企業・研究機関・大学などが対象(個人でも購入は可能)で、販売は受注生産、完成品での納品という形となる。価格は、開発環境も備えた(正確には無償の開発環境を使用する形)カーロボット・プラットフォームとしては非常に低価格な39万9000円(税込)。同社Webショップおよび東京秋葉原店と福岡ロボスクエア店のロボットセンター店頭にて注文の受け付けを実施中だ。
近年、追突や衝突などの事故回避、前走車に対する全車速追従機能、居眠り運転防止など、運転支援システムが年々高度化してきており、まさに自動車のロボット化が進んでいる。自動運転も遠い話ではないほど、発達しているのだ。しかし、そうした開発を進めるにはいうまでもなく莫大な費用がかかり、既存の大手自動車メーカーであっても、その点は憂慮すべき問題となっている。また、電気自動車の開発は自動車メーカー以外の、例えば家電メーカーなどもできるともいわれているのだが、やはり現状では実寸のテストカーを製作してテストコースを借りて……といった作業が必要であり、やはり費用がかさむ。結果、なかなか簡単に電気自動車の開発はできないというわけだ。開発費用を下げるには、初期の研究開発段階で実車を用いずに済ませることが求められており、室内でも運用可能なスケールモデルで行なえる小型のテストカーが注目されている。
そうした状況の中、中学校の技術家庭科用教材の小型機「ビュートレーサー」、小中学生向けのものづくり教育からC言語を用いた本格的なプログラミング学習まで行なえる「ビュートローバーH8/ARM」(記事はH8がこちら、ARMがこちら)、二輪倒立振子型の「ビュートバランサー・デュオ」といった車両型ロボットをリリースしているヴイストン株式会社が、今回満を持して投入したのがビュートEVというわけだ。1/10スケールなので、全長は45cm弱。室内でも走らせられるロボットカーである。
ビュートEVは、7.2Vのニッケル水素バッテリ6セルで動作する小型電気自動車をベースに、制御機構と各種センサを搭載。標準で搭載されているセンサは、超音波測距、赤外線、PSD測距、2軸ジャイロ、3軸加速度、電力、前方用Webカメラにおよび、さらにオプションで全周囲を撮影可能な全方位センサ「VS-C14U-33-ST」(税込み価格9万2400円)、北陽電機株式会社製スキャナ式レーザレンジファインダ「URG-04LX-UG01」(税込み価格9万9750円)なども搭載可能だ。インターフェースに関しては、無線LANやUSB、Bluetooth、SDカードスロット、仮想シリアルポート、アナログ入力ポート、I2Cなどを備えている。
メインCPUとして小型のWindowsノートPCを車両後部に標準装備しており、ノートPCには各種インターフェースも搭載。ノートPCなので走行状態のログの保存や、走行中に撮影したカメラからの映像の保存なども問題なく行なえる。そしてもうひとつ特徴的なのはサブCPU(マイコンボード)を搭載していること。しかも、そのボードは、ビュートローバーでも採用されている「VS-WRC003LV」および「VS-WRC103LV」。VS-WRC003LVが搭載しているマイコンは、初心者にも利用しやすい環境や資料が整っているルネサス エレクトロニクス株式会社製「H8/36064G」(8ビット)。VS-WRC103LVには、より高度な実験・研究用途に向いている処理がより高速なARM社製「Cortex M3」コアを搭載したNXPセミコンダクターズジャパン株式会社製32ビットマイコン「LPC1343」という形だ。
CPUをふたつ搭載している理由は、処理の種類によって二系統に振り分け、プログラム開発をより理解しやすくするためである。車両制御のように制御そのものは単純だが、反応速度を要求される時はサブCPUが担当。画像処理などのより高度な処理の時は、メインCPU(ノートPC)が担当するというわけだ。ちなみに、サブCPUのC言語での開発環境もビュートローバーと同じで、H8版用は「High-performance Embedded Workshop(HEW)」が、ARM版用はNXPセミコンダクターズによる「LPCXpresso」(英語版)が無償で提供される。ビュートローバーで学習した人にとっては、開発環境も含めてスキルや経験などがそのまま活かされる形になるというわけだ。
そのほか、独立行政法人産業技術総合研究所などによって、ロボット技術の標準化を目指して開発された「RTミドルウェア」向けのライブラリおよびサンプルソースも付属。これにより、RTミドルウェアを活用したロボットシステムへの組み込みも容易に行なえるというわけだ。
なお、今回の開発は日本工業大学ものづくり環境学科のコンセプトを基に、ヴイストンが開発を行った。製品はすでに同大学に納品されており、交通流の円滑性向上、環境負荷軽減のための自動車制御システムの開発、運転支援システムの評価などに使われているとしている。スペックは、以下の通り。