【ロボット名鑑】本田技研工業(ホンダ)「P4」
プロトタイプP3と初代ASIMOをつなぐ幻の機体
ホンダ「ASIMO」の直前のプロトタイプといえば、「P3」というのが一般的な認識。しかし、実際にはその間にもう1機あったのだ。それがこの「P4」である。1997年09月発表のP3と、2000年11月発表の初代ASIMOをつなぐ「幻」ともいえる機体だ。現在は、世界でもただ1ヵ所、ホンダ系サーキットのひとつであるツインリンクもてぎ(栃木県)内の展示施設「Honda Collection Hall」で展示されている。
このP4、初めて名前を聞く人も多いかと思うが、実はそれには理由がある。当時はP4とは呼ばれておらず、「P3改良型試作機」とされていたのだ。P4としてはもちろん、P3改良型試作機としての正式な発表は当時行われなかったが、P3が改良されたということは告知されている。ホンダ公式サイトでP3改良型試作機で検索をかけると、改良点やスペックなどを記した当時のページを今でも見ることが可能だ。
P4と改称した理由は、P3と並んでいる画像を見てもらえばわかるが、もはや別物というほど外見が変化している点が大きい。改称されたタイミングは、ツインリンクもてぎのHonda Collection Hallで、展示されるようになった時からだ。ツインリンクもてぎでは、2010年03月20日にロボット関連の展示の模様替えがあり、それまでのファンファンラボからHonda Collection Hallにロボットとその解説パネルなどが移設された。それに際して目玉として展示されたのがこのP4で、そのタイミングでP3改良型試作機からP4に改称されたという次第である。
P4の身長は160cmとP3と変わらないのだが、大きく異なるのが重量。P3は130kgもあり、人間と共同生活を送るには少々不向きなヘビーウェイトであったが、P4は一気に80kgを達成している。日本の大柄な成人男性の体重と変わらないぐらいの重量となったわけだ。ちなみに初代ASIMOは身長120cm・体重43kgで、2005年12月発表の新型(2代目)ASIMOは身長130cm・重量54kgである。
前述したようにデザイン的にはP3の一種とするにはかなり異なっており、肩などが特に細身になっている。また、P3は直線的なイメージが強いが、P4は丸みを帯びており、一部はASIMOにも通じるような雰囲気を見て取れる。さらに、ボディの一部には鮮やかなすみれ色が使用されており、鮮やかさではASIMOすら凌駕しているといえよう。
性能面でP3と大きく異なっているのは、自由度の数。P3の30(頭2、頭2、腕7×2、手1×2、脚6×2)に対し、両手にひとつずつ、腰にふたつ追加され、34となっている。自由度が増えていることからもわかるように、P4はP3の運動機能を向上させた実験モデルとして開発された機体だったのだ。ASIMOが現在も披露している容易な方向転換やダンスステップなどの自在歩行もP4から搭載しているし、腰に自由度を持たせたことで上体のみのひねりや回転も実現。そのほか、腕の運動性能も向上している。
なお、自由度は初代ASIMOでは逆に減って26(頭2、腕5×2、手1×2、脚6×2)となっているが、新型ASIMOでは再び34(頭3、腕7×2、手2×2、腰1、脚6×2)に戻された。ただし、P4と新型ASIMOでは、同数でも場所が異なっており、頭がP4は2なのに対して新型ASIMOは3、腰がP4は2なのに対して新型ASIMOは1となっている。余談だが、ASIMOは頭部が3自由度になったことで、首をかしげることが可能になった。それにより、よりかわいらしいポーズも取れるようになったのである。