【ロボットのいる施設を訪ねて】第1回:初代と新型の「ASIMO」と
11機の試作機が待つツインリンクもてぎ「Honda Collection Hall」
全国各地のロボットが展示されている、または活躍している施設を訪ねて歩くシリーズ「ロボットのいる施設を訪ねて」。第1回は、「Honda Collection Hall」をお届けだ。
同施設は、首都圏からも比較的近い、栃木県のサーキット「ツインリンクもてぎ」の敷地内にある。同サーキットは、本田技研工業(以下、ホンダ)の子会社であるモビリティランドが運営しており、Honda Collection Hallはホンダ創立50周年記念事業の一環として、1998年03月にオープンした。
これまでは、ホンダが開発してきた市販の2輪車・4輪車に加え、レース用の車両や他メーカーのライバル車両など約350台を展示(画像12)してきた。そこへ、2010年03月20日からはASIMOとそのプロトタイプたちの展示もスタート(画像05・06・07)。日本でも指折りの自動車系ミュージアムであることに加え、初代ASIMOや11機のプロトタイプも展示される世界でも唯一の施設となったのである。これまで同サーキット内の別施設であるファンファンラボで、ロボットたちと共に展示されていた解説パネル(画像09)一式も合わせて引っ越しをしている。
ちなみに、Honda Collection Hallはクルマの展示施設であり、ASIMOやプロトタイプたちを展示することに疑問を感じる方もいるかも知れない。しかし、ASIMOは「Advanced Step in Innovative MObility」の略であり、日本語でも「明日のモビリティ」とされる。ホンダ自体はモビリティの1種と考えており、ASIMOとその兄弟たちは、Honda Collection Hallで展示されるにふさわしいメカなのだ。なお、プロトタイプについ目が行き勝ちだが、2000年にデビューした初代ASIMOは引退しており、現在はHonda Collection Hallに展示されている機体のみが、一般に公開されている唯一の機体となっている。
ASIMOたちロボットの展示スペースは、同館北棟1階(入口から右奥)にある学習エリア(画像03・04)。現在はASIMOなどの開発総括責任者を務める広瀬真人氏の脚部の寸法をベースに開発した1986年製の「E0」に始まって、1996年12月に発表されて世界中に衝撃を与えた世界初の人型自立二足歩行ロボット「P2」(画像07)、ニューヨークの地下鉄の入口の階段を上がってくる1999年放映のTVCMで知られた「P3」など、すべて実際にスタッフが開発していた機体が展示されている(展示されているプロトタイプには、研究スタッフの書き込みなどもあるのだ)。
ファンファンラボからの移設に際して目玉となったのが、P3と初代ASIMOの間をつなぐ幻の機体の「P4」(画像08)が展示されたこと。従来は、プロトタイプ最後の機体は1997年09月デビューのP3とされてきたが、実はさらにその後にもう1機プロトタイプがあったのである。しかし実際のところは、厳密な意味で世間に完全に秘匿されてきた幻の機体というわけではない。PシリーズやASIMOのように、大々的な公式発表は行っていないのも事実だが、実は「P3改良型試作機」として当時紹介されていたのだ。ホンダ公式サイトでは、今でもP3改良型試作機で検索をかけると、そのスペックや改良点を説明したサイトを見ることが可能だ。つまり、かつてはあくまでもP3の改良型だったのである。しかし、P3と比較してもらえばわかるが、別機体といっていいほど外見が異なっており(完成度もASIMOにかなり近い)、今回P4と名称を改めた形で、展示されたというわけである。なお、P4に興味のある方は、ロボット名鑑の「ホンダ『P4』 プロトタイプP3と初代ASIMOをつなぐ幻の機体」も合わせてご覧いただきたい。
そして、新型ASIMOによるデモンストレーションを行なう「ASIMOスーパーライブ」もファンファンラボから移る形となり、平日は1日2回、土日祝日は1日3回、学習エリアに近いオリエンテーション室で行われている(画像10)。全身を協調させて行なうダンスやサッカーボールのキック、ドリンクトレーの運搬、時速6km/hでの走行などなど、新型ASIMOがその能力をいくつも披露。ロボットに興味を持っている子供はもちろん、そうでない子供でも必ず喜ぶ内容となっているのが、Honda Collection Hallというわけなのだ。
さらに、2010年04月29日からは、前年の9月に発表されたホンダの次世代パーソナルモビリティ「U3-X」のデモンストレーションもスタート(画像11)。ASIMOステージショーと同じく1階北棟のオリエンテーション室で行われている。土・日・祝日は1日に3回、平日は2回。約5分間となっている。
同館への入館自体は無料で、ツインリンクもてぎへの入場料のみが必要。入場料は、大人(15歳以上)1200円、子供(小中学生:6歳~15歳未満)500円、幼児(3歳~6最未満)300円となっている。駐車場代は2輪・4輪ともに平日は無料だが、土日祝日およびゴールデンウィークや夏休みなどの特別期間は2輪が300円、4輪が600円となっている。