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つくばモビリティロボット特区で公道実験がいよいよスタート!
当初はセグウェイ、日立製作所、産総研が参加

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数々のロボット関連企業や研究機関が存在し、そして全国初のモビリティロボット実験特区(2011年03月25日に内閣総理大臣によって認定)として知られる茨城県つくば市。去る6月02日より、いよいよモビリティロボットによる公道実験がスタートした。つくば市とロボット特区実証実験協議会が主導する実証実験である(リリースはこちら)。

今回の公道実験が目指すのは、社会で役立つロボットの実用化と、法改正などのロボットを受け入れるための社会システムの変革を含めた社会導入だ。実験の主な評価検証項目は、「ロボットの社会的な有効性」、「歩行者などとの親和性(社会受容性)」、「実環境における搭乗者の安全性」などとしている。

ロボットの社会的な有効性としては、低炭素社会づくり、安全安心な街づくり、高齢者も元気に暮らせるコンパクトシティづくりなどに向けて、ロボットがどの程度役立つのかを評価検証していく。実験当初から参加する1社であるセグウェイジャパン株式会社(以下、セグウェイ)については、既に実績を有するロボットであることから、特に安全・安心な街づくりに役立つことが期待されるとして、防犯サポーターなどによる防犯パトロール実験を行い、その有効性を評価検証していく予定だ。

同じく開始時から参加する独立行政法人産業技術総合研究所(以下、産総研)と株式会社日立製作所(以下、日立)の試作型のロボットについては、初めての本格的な公道実験となる。そのことから、当面は両社の関係者が搭乗者となって公道実験を行い、実環境でのロボットの操作性などを検証していくとしている。その後の予定として、第三者や想定ユーザーなどが登場しての公道実験を行い、セグウェイと同様に低炭素社会やコンパクトシティづくりに向けた有効性や貢献度などを評価検証していく。

これらに加え、今回の実験ではモビリティロボットが社会に受け入れられるため、歩行者などとのほかの通行者との親和性(ロボットが新たな移動手段としてほかの通行者と共存できるかなど)、実環境における搭乗者の安全性(さまざまな環境下において不特定多数の通行者がいる中で安定的に移動できるかなど)についても評価試験を行っていく形だ。

そして今回の実験の意義についてだが、まず企業単独ではできない実験であることがひとつ。ロボットの実用化および産業化を実現するためには、実社会において第三者やユーザーを交えて実験を行う必要がある。そして、ユーザーの声をロボットそのものやロボットを活用したサービスの開発・発展に活かし、さらに新たな実験を行っていくというスパイラルが不可欠だ。つくばモビリティロボット特区では、ユーザーとのキャッチボールにより、ロボットの社会的な有効性を評価・検証し、社会に役立つロボットおよびロボットによるサービスの開発を目指していくとしている。

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また、生活支援などのサービスロボット産業を拡大させるためには、ロボット自体の開発だけでなく、ロボットを活用したサービスを含めたビジネスモデルそのものを開発していくことが大変重要であるとも指摘。そのような観点に立ち、ロボット単体の開発を目指すのではなく、ロボットをひとつのツールとしてパッケージ化した新たなサービスの開発を目指し、大規模な社会実験への発展も視野に入れて今回の実証実験を行っていくということだ。

開始時から参加するモビリティロボット(パーソナルモビリティ)は、まず産総研が「インテリジェント車いす」シリーズ4台と立ち乗り平行2輪倒立振子型の「マイクロモビリティ」1台の計5台(記事はこちら)。自律走行車いすシリーズの内訳は、つくばチャレンジ2010(記事はこちら)で上位完走を果たした「自律走行車いす(Marcus)」1台、産総研オープンラボ2010(記事はこちら)のデモンストレーションでも活躍した「追従走行車いす」2台、そして今回初お披露目となる「全天候型自律走行車いす」1台となっている。今回の試作型のモビリティロボットに関するスペックなどの詳細は、後ほどロボット名鑑の記事として別途掲載する予定だ。

日立は「日立搭乗型移動支援ロボット」1台。こちらは、つくばチャレンジ2010でトップタイムをマークして完走した「Sofara-T」をベースに開発された機体で、センサ構成などは同一となっている点が特徴だ。ただし、現時点ではまだ自動運転機能は搭載されておらず、近いうちに導入するとしている。今回は、ドライバーによる運転となった。詳細はこちらをご覧いただきたい。

当日は残念ながら雨天となってしまい、キックオフセレモニーは予定していた中央公園から、ショッピングモール「つくばクレオスクエア」を構成する「MOG」の1階通路広場「プラザ・パフォーマンス」に移して行われた。セレモニーでは、つくば市市長の市原健一氏、日立製作所システム研究部部長の梅北和弘氏、セグウェイジャパン代表取締役の大塚寛氏、産総研知能システム研究部門フィールドロボティクス研究グループ長の松本治氏が挨拶を行い、それぞれロボット特区に対する思いや、日本の今後に対するロボットがなす役割といった抱負を語った。

その後、前述したモビリティロボット全台そろってMOGの1階通路での走行を開始。さらにその後は雨天の中、中央公園に移動して実験の続きを行った。雨天の中でも、既に実績のあるセグウェイはもちろんまったく問題なくスイスイと移動するところを報道陣に披露。そのほか、日立製作所搭乗型移動支援ロボットや全天候型自律走行車いすも問題なく走行していた。追従走行車いすも平坦な歩道は問題なかったが、中央公園の遊歩道では入り口すぐの上り坂で路面が濡れてスリッピーなことからも、登れなかったようだ。

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雨天であったため、実験する側も取材する側もままならない状況ではあったが、ロボットにとっては全天候環境での実証試験を行う、またとないチャンスだったといえよう。F1などのモータースポーツの世界でも、テスト走行時になかなか雨が降らなくて電装系の防水チェックなどを行えず、本番のレースで雨天に見舞われてリタイヤしてしまうということがままある。狭いスペースなら擬似的に降雨を再現することは可能ではあるが、やはり特区全域が濡れた状況で、なおかつ雨が降る中を走行するというのはやはり再現は難しいため、なかなか貴重なデータを得られたのではないだろうか。そういった意味では逆にさい先のいいスタートだったことだろう。この後は、下に記したように6月だけでも複数回の公道実験が行われるので、興味のある人は足を運んでみてはいかがだろうか。

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