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TOP >  イベントリポート >  記事2010年12月07日-a

4年目を迎えた「つくばチャレンジ2010」リポート
年々難度が上がるも技術も向上し今年も7台完走

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11月18日・19日に茨城県つくば市の中央公園などの一般公道を利用して行われた、自律移動ロボットの市街地走行実験「つくばチャレンジ2010」(主催:財団法人ニューテクノロジー振興財団、つくば市)。4回目を迎えた今年は、昨年とほぼ同等の70チームがエントリーした。実際には、トライアル当日までに2チームがエントリーを取り消し、2チームが当日に出走を取りやめたことから、最終的に64チームが挑戦。その模様をお伝えする。なお、このほかにも後ほど、つくばチャレンジ2010関連の記事をお届けする予定だ。

トライアル・ファイナルともに、コースのスタートは中央公園内のH-IIロケットが目印となるつくばエキスポセンター入口。そこから池に沿って右回りに公園内の通りを進み、ちょうどスタート地点の池を挟んだ反対側のところで、トライアルはゴールとなる。距離は240mだ。ファイナルは、そこからバス通り沿いの歩道に出て駐輪場脇を進み、再び公園内に戻る。そしてつくば公園通りに戻り、茨木県道24号の上の橋を通過。つくばセンター広場に入ってオークラフロンティアホテルやライトオンといった建物の前を通って大きなループを描いて、最後はつくばサイエンスインフォメーションセンター内に入ってゴールとなる。自動ドアの開閉もちゃんと確認した上でロボットたちは入っていく形だ。距離は約1.1kmである。

トライアルは午前と午後の2回の走行が行われ、合計31台が完走(1回で通過したのは26台、2回目で通過したのは5台)。同イベントは競技会はないので順位などは基本的にないのだが、参考までにトップタイムを挙げると、18号車「Sofara-T」(日立製作所機械研究所)の3分49秒。次点は33号車「Smart Dump IV」(防衛大学校 情報工学科ロボット工学研究室)の3分58秒。この2台がずば抜けており、ファイナルもどちらがトップタイムを叩き出すかで注目される形となった。ファイナルは、この31台に加え、最もゴールに近かった芝浦工業大学ロボティクス研究室の27号車「Ari-03」を加えた32台が挑む。

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なお、二足歩行型や多脚型といった歩行する機体は、安定性の面と万が一の転倒時の安全性(一般公道での実験のため、当然幼児なども歩いているので)の問題などから、今年も参加していない。つくばチャレンジの提唱者で実行委員長でもある筑波大学の油田信一氏によれば、参加を禁じているわけではなく、安全対策さえ取れれば出場は問題ないとしている。

迎えた翌19日のファイナル。トライアル未完走だが、あと10mという地点まで到達したAri-03からスタート。続いては、2回目でトライアルをクリアした6台だ。出走順はタイム順ではなく、くじ引きによるランダムである。その後に、1回目にクリアした25台だ。こちらも出走順はランダムなので、速い機体はうまく追い越すこと、追い越される側もうまく追い越されることが重要となる。出走順のこうした配慮は、昨年のファイナルがタイム順だったため、トップバッターの完走候補筆頭の出走時に人垣ができてしまい、ロボットが目標を見つけられず、スタート直後に早くもコースアウトしてしまうなど、「速くて期待されるロボットほど不利」だった状況を改善するために取られた(こういう不幸な自体も、すべて「環境」認識の問題とし、救済措置は認められない)。

結果、完走第1号となったのが、前述の防衛大のSmart Dump IV。9番目スタートで、タイムは21分20秒。直線などでは少し早歩きするぐらいの、出走ロボットたちの中では1、2を争うスピードでいながら(ルール上の上限は時速4km/hで、ほぼそれに等しい)、同時に抜群の安定感を見せ、ゴールした。つくばチャレンジは、7月から練習走行がスタートするのだが、1、2を争う早い段階でファイナルのコースを克服したのもSmart Dump IVである。あとは突発的なトラブルや、完走が期待されるロボットゆえの嬉しくも厳しい見学者・取材陣の多さが影響しなければ、という状況だったが、それもなく当然の如くのゴールとなった。

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そして、今回のトップタイムをマークしたのが、15番手スタートで、途中で何台もの追い抜きを行い、2番目に完走を果たした日立Sofara-T。20分22秒の記録を出した。レーザーレンジファンダを機体上部にふたつ、下部にふたつ、そして前部に可動式のひとつという計5個を備え、環境マッピングを3次元で行っている。障害物を認識すると、直線などでは10m手前からそれを避けるべく進路を変更するため(それだけ変更する角度が小さくて済む)、その経路にとてもスムーズさがあるのが特徴だ。こちらも、ルール上の上限の時速4km/hにわずかに欠けるという高速度を誇る。前日のトライアルでは、完走後にこれでもかというぐらいにファイナルのコースを練習周回し、少しずつ条件を厳しくするなどして7周はしたというその入念ぶりも印象的であった。

そのほかに完走したのは、出走順で紹介すると、千葉工業大学 fuRo アウトドア部の33号車「Papyrus III」(43分46秒)、筑波大学知能ロボット研究室屋外組2010の16号車「ひとつぼ」(30分5秒)、電気通信大学 知能システム学講座の13号車「CARTIS TypeR」(25分48秒)、Scuderia Frola AISTの31号車「Marcus」(24分31秒)、富士ソフト/筑波大学MRIM プロジェクトの34号車「TUFS2010」(26分26秒)となった。なお、CARTIS TypeRのみタイミングが合わず、写真撮影はできたが、動画に収めることができなかったので、ご了承いただきたい。

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