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セグウェイジャパンとグローバルエンジニアリング
移動ロボット向け環境シミュレータ「.env」を販売開始

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日本国内のセグウェイシリーズの総代理店として知られるセグウェイジャパン株式会社は13日、ロボットを含むITとバイオテクノロジーの両方を取り扱う中京圏の企業・株式会社グローバルエンジニアリングと共同で、移動ロボット向けの環境シミュレータ「.env(ドットエンヴ)」を開発したことを発表した(リリースはこちら)。販売は2月01日からで、価格は63万円(税込)。

.envを開発した理由について、セグウェイジャパンは、昨今、移動用ロボットの研究開発が活発化してきていることを挙げる。同社も移動ロボットプラットフォーム「Segway RMP」シリーズを扱っているほか、同社が独自で「Blackship」シリーズを開発中だ(同社は、米Segway社の日本法人ではなく、旧日本SGI社のロボット部門が独立して現在に至る日本の企業である)。

また、国際的なロボットのコンテストである「ロボカップ」におけるレスキューロボットの開発や、移動ロボット技術の実証実験「つくばチャレンジ」での屋外での走行実験に参加するなど、さまざまな活動をしている。さらに、経済産業省の「21世紀ロボットチャレンジプログラム」の一環である「次世代ロボット知能化技術開発プロジェクト」にも参画。独立行政法人産業技術総合研究所の「RTミドルウェア」に関しては、同ミドルウェア上で動作するソフトウェアコンポーネントの開発に携わっている。

一方のグローバルエンジニアリングは、以前からセグウェイジャパンとロボット事業戦略の提携を行っており、マネキンロボット「Palette(パレット)」をフラワー・ロボティクス株式会社を加えた3社で共同開発した経緯がある。また、そのモーション作成ツールなども手がけてきた企業だ。

そんな2社が、ロボットのプロトタイプを実際に開発する前にシミュレータを用いてさまざまなデータ収集を行うことで、「実環境でのトライ&エラー時間の短縮」、「開発自体の効率向上」に寄与できるとして開発したのが、.envというわけだ。同ソフトは、移動ロボット自体のシミュレータと思う人もいるかも知れないが、実はもっと扱っているものが大きい。その名が示すように、移動ロボットがセンシングする環境そのものを仮想的に提供する環境シミュレータなのだ。もちろん、移動ロボット自体も精細にシミュレートされているわけだが、それだけではなく、ロボットが実験を行うための場所もシミュレートしてしまえるのである。

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ちなみに.envがどのぐらい精細なシミュレータかというと、ロボットの移動ひとつを見ればわかる。.envには物理エンジンが搭載されているのだが、例えばタイヤで移動するようなロボットの場合、そのタイヤが回転することによって発生する地面との間の摩擦力をきちんとシミュレートして、そこで初めてロボットが前進後退を行うという具合。単にグラフィック的に移動しているとか、距離を速度で割って移動時間を算出しているとか、そんな単純なものではないのである。よって、地面の摩擦係数を変化させれば、屋内外問わずさまざまな場所での移動をシミュレートできるし、ロボットの重量や重心などを変化させれば、同じ環境でも動作の違いを確かめられるというわけだ。環境が固定された状態のシミュレータは多いが、環境そのものも細かく設定できるという仕組みは、.env最大の特徴である。

さらに、Segway RMPのような平行2輪倒立振子型の移動ロボットに関しては、その制御機構もシミュレートしている。タイヤと地面との摩擦などに加え、ロボットの姿勢変化による重心移動もシミュレートされ、それによる前進後退(加減速)を行うというわけだ。その際の姿勢情報や車輪のエンコーダの値など、実機のロボットが出力できる各種情報に関しては、ほぼ同じプロトコルで実装されているのも特徴。各種データのbit数などの値は、実機の精度に準じた状態で出力され、各種ソフトウェアにそうした値を渡すこともできるようになっている。レーザーレンジファインダ、カメラ、赤外線、GPSなどさまざまなセンサを扱え、搭載したロボットの姿勢に応じた値を出力する仕組みだ。

また、シミュレータの利点である、人の目には見えないものを可視化するという点にも力が入れられている。各種センサに対するセンシング対象を用意しており、そのセンサがその瞬間に獲得した値を、仮想環境上でリアルタイムに可視化を行う。要は、障害物のある屋内で、例えばレーザーレンジファインダを使ってセンシングした際、直接レーザーが当たっている視界内と、当たっていない部分とで色を変えて表現し、ロボットにとって見えている部分と見えていない部分が、一目でわかるようになっているというわけだ。

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 具体的に対応しているロボットとしては、Segway RMPシリーズやBlackshipシリーズ、株式会社ゼットエムピーのカーロボティクス・プラットフォーム「RoboCar」などとなっている。ソフトウェアとしては、米SRI International社の「KARTO SDK 2.0」による地図作成機能なども、.env上で利用できるとしている。

そのほかの特徴としては、RTミドルウェアや、米Willow Garage社開発の「ROS」との接続性を持つことから、それらのミドルウェアで動作するオープンソースを含めたさまざまなソフトウェアと組み合わせることも可能だ。

なお、.envは、2月01日の製品版の販売開始以降に、無料評価版を公式サイト上からダウンロード配布する予定となっている。また、公式サイト上には、つくばチャレンジなどでの利用例も動画付きで紹介されており、要必見だ。

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