ロボット・プロレス「できんのか!」のプロデューサーであるミステル・タマオ総統へのインタビュー at 南越谷の後編。総統は、9月04日(日)に静岡県コンベンションセンター「グランシップ」で開催される「できんのか!8」(ホビーロボットコロッセオで行われるイベントのひとつ)で、どんなカードを用意したのか?(前編はこちら)
-:それでは、全カードを教えていただけますか?
総統:今回はホビーロボットコロッセオ内でのショーなので、3試合とコンパクトにまとめてます。第1試合がワルーvs流血仮面。第2試合が、サアガvsレグホーン。第3試合は、ナガレゴールド対サンダーボルト。
-:なるほど、クォリティの高いメンバーを集めてますね! どれも好勝負間違いなし、という予感がします。1試合ずつ掘り下げてみたいのですが、第1試合は、地獄の墓堀人ワルー対正義の流血仮面。どこに注目すればいいですかね?
総統:この対決を見れば、ロボットプロレスとはなんぞや? というのがわかるでしょう。ワルーは、前々回「できんのか!6」の時に、ワールドトライアウトでアメリカから発掘してきた選手。関東ロボットヘビー級王者のサアガを相手に入団テスト的な勝負に挑み、そこで必殺のギロチンドロップを繰り出してなんと勝ちをもぎ取ってしまった。予想以上の実力者だったんで、本当に驚きました。そんなワルーに対し、体格で劣る流血仮面がどう闘うかが見所でしょう。
-:流血仮面はほかの興行のROBO-ONEやROBOT JAPANなどでも大型選手、しかもなぜかワルーと酷似したガルーと対戦することが多くて、いつもフルボッコにされてますね。それでも、根性で立ち上がるその必死な姿が、いつも会場を沸かせてます。
総統:自分自身が彼のマネージャーを務めているわけだけど、彼のガッツには感服しますよ。今回もあのワルーが相手なので、ガッツしかないだろうし。
-:第2試合は、前回「できんのか!7」の関東ヘビー級のタイトルマッチの再戦ですね。あの時は、サアガがレグホーンを瞬殺してしまった。
総統:そのことに対して、レグホーンが所属する大北京プロレスのダーシャン総帥がクレームをつけてきたんですよ。タイトルマッチ前に闘った際に、向こうはリハーサルだと思っていたらしいんですけど、こっちは前哨戦と伝えていて。その結果、サアガの必殺のジャーマンスープレックスを食らって、油断していたのかレグホーンが頸椎を捻挫してしまったんです。それで、タイトル戦ではまともに動けず、秒殺になってしまったという。これに対し、ダーシャン総帥が「できんのか!の陰謀だ」と。卑怯なスープレックス系の投げ技(投げられる側が完全に宙に浮く形の投げ技)はなしで闘えといってきた。それを、サアガは王者として受けたというわけなんです。こちらの動画を見てもらえば、よくわかると思います。
-:スープレックスなしですか! それはサアガにとって厳しいですねぇ。彼は決して体格で勝っている選手ではなく、投げ技の破壊力で王座に君臨している選手ですから。しかし、レグホーンもサアガに対して積もる恨みがあるのもわかります。なんせ、ロボットレスラー生命を絶たれかねない頸椎捻挫はさせられたし、しかもそれが不意打ちだと思っているし、その後復活したもののすっかり調子を落としてしまったようですから。先月も、大北京プロレス内での闘いで最大のライバルに2連敗を喫してしまって、すっかり荒れていると聞いてます。これはヤバい闘いになりそうです。
総統:なので、「手羽スラッシュ」という、大北京プロレスで猛威をふるっている打撃技を持つレグホーンに対し、必殺技を封じられたサアガがどう闘うのかと。この苦境に立たされたサアガの奮闘ぶりに注目してほしいですね。
-:第3試合は、ナガレゴールド対サンダーボルトの、日本の魔術師対カナダの呪術師の闘い。今回で4戦目になりますね。しかも、ナガレゴールドの3連勝中。ナガレゴールドに分があるんじゃないですか?
総統:ナガレゴールドはアメリカで行われた世界大会のバトル部門で金メダルを取りました。でも、一方のサンダーボルトもアメリカの大会のパフォーマンス部門で金メダルを獲得しています。
-:伺ってます。つまり、金メダル同士の対決ということですね。
総統:確かに強さだけで見ると、現在のナガレゴールドの方がサンダーボルトより上かも知れません。でも、この闘いは単に強さだけを比べるものではないんです。バトルに強い者がお客を呼べるのか、それともパフォーマンスに優れる者がお客を呼べるのか。力を持つ者なのか魅せる者なのか。一種のイデオロギー的な対決なんですね。詳しくは、こちらも見ていただくとして、どちらがお客を呼べるのか、喜ばせることができるのかという勝負です。
-:ただの強さ比べでないところが、プロレスらしく感じます。一般的な格闘技とは違うところですね。
総統:サンダーボルトは対ナガレゴールド戦では確かに3連敗中だけど、それでも決して実力がないロボットレスラーというわけではないです。油断していれば、ナガレゴールドが負けることだって十分ある。でもポイントは、これまでサンダーボルトは負けても株を上げているという点ですね。それが可能なのも、やはり彼がロボットレスラーとしてバツグンのセンスを持っているからだと思います。
-:しかし、やはり勝負に勝てなくてはいけません。ナガレゴールドは、無敵の大技というか魔術、「時報」がありますよね。対戦相手はもちろん、報道陣も観客もその場にいるあらゆる人々をズッコケさせてしまう必殺技ですが、サンダーボルトは今回はどうするんでしょう?
総統:前々回の対決で、サンダーボルトは、ナガレゴールドが時報を発動させる体勢に入って実際に発動するまでの数秒間のスキを突いて、サンダースピアー(タックル)をぶちかまして破ることには成功しています。なので、ナガレゴールド自身は、少なくとも対サンダーボルト戦では時報はもう使えないという風に考えているようです。
-:となると、逆にナガレゴールドはどう闘うのでしょう?
総統:この間の「できんのか!8」の記者会見(記事はこちら)でも使っていましたが、「パネル魔術」でしょう。これは、サンダーボルトが未だに封じることができていない技なので、今回も使ってくると思います。
-:確かに記者会見の際も、サンダーボルトはパネル魔術にダマされていましたね(動画はこちら)。ROBO-ONE in 新発田の予選から数えて、4回もダマされていますが、やはり画像認識に問題があるのでは? 先日の会見では、「ナガレゴールドなんて眼中にないから見えてなくて当然!」とマネージャーのDJ柴田氏が強がっていましたが。
総統:サンダーボルトは前々回の勝負での敗戦により追放されてしまった関係で、故郷のカナダでは周囲から白眼視されています。でも、それでも無理してカナダに戻り、猛特訓を重ねているようです。オーロラの見えるような緯度の高い、雪深い山奥にこもって、ブリザードが吹雪き、ダイヤモンドダストが舞うような中で画像認識機能に磨きをかけていると聞いています。雪の白さの微妙な違いを見分けられるように鍛えていると、先日、DJ柴田が衛星回線経由の電話で現地から伝えてくれました。それに、サンダーボルトはナガレゴールドのことになると熱くなってしまうようで、極寒の中に身を置いているのは、何事にも動じない冷静さを身につけるという狙いもあるようです。
-:リチウムポリマーのバッテリもちゃんと機能しなくなるような極寒じゃないですか! オーロラが見えるような緯度って、たぶんバナナでクギが打てたりもしますよ。
総統:古い(笑)。とにかく、寒すぎてリポが働かないような時でもDJ柴田が手で温めるなどして、二人三脚のもう死にものぐるいの特訓をしています。ちなみにDJ柴田は、何度かブリザードの中で眠ってしまいそうになって、花畑が見えた時もあるそうです(汗)。
-:闘う前に凍死しかねない状況じゃないですか! サンダーボルト陣営の気合いの入り方が、まるで違うことがわかりました。そうまでして、自分からいろいろなものを奪ったナガレゴールドを倒したいんでしょう。しかし、確かに画像認識機能的に「白色」に強くなるというのは、有効かもしれませんね。パネル魔術で使われているパネルも白いですし。パネルの中の2次元のナガレゴールドがくわえているタバコも白ですし。有効そうです。
総統:なので、バトルとパフォーマンスと、どちらが客を呼べるロボットなのか!? まさに、世界一の「ザ・ロボットプロレス」が期待できるわけです。ぜひ楽しみにして下さい。
-:ほかには何か読者の方に伝えておきたいこととかありますか?
総統:今回のショーの中で、ひとつ重大発表をする予定です。まだ公表はできないけど……(ゴニョゴニョ)。
-:ほほう! それはそれは。今年は震災の影響とかもあって前半にショーができなくて心配していましたが、「できんのか!」、勝負に出てますねぇ!
総統:あと、まだしばらく先ですが、11月03日の聖地・草加大会「できんのか!9」も決定しています。こちらも、ぜひ注目してもらいたいです。
-:「9」に関しては、また改めてお話を伺えればと思っています。本日はありがとうございました。
というわけで、「できんのか!8」の3試合の見所、理解してもらえただろうか? 熱くなることは必至なので、ぜひ静岡まで足を運び、6選手の闘いを目撃していただきたい。ロボットバトルエンターテイメントの最先端、「できんのか!8」にこうご期待だ! なお、当日足を運べない人は、USTREAMによるlive中継がオススメ。USTREAMの「hobby-robot-colosseo」をチェックしておこう。なお、「できんのか!8」のポスターでは、開始時刻が4日の14時となっているが、13時45分に変更されているので、間違えないよう注意してほしい。