日本科学未来館メディアラボで第7期展示スタート
明和電機の土佐信道氏による「ノック!ミュージック」
日本科学未来館では6月30日より、3階にある常設展示「情報科学技術と社会」の中で、「メディアラボ」の第7期「ノック!ミュージック -打楽器からコンピューターに至る4つの進化論-」をスタートした。第7期は、デバイス(装置)アート系の一風変わった楽器を用いたパフォーマンスで、世界的な活動をしているアートユニット「明和電機」の代表取締役社長の土佐信道氏(画像01・02)の作品群の展示となる。期間は夏休みを挟んで10月11日まで。
デバイスアートとは、科学と技術の融合から生まれた日本発の先端芸術のことで、さまざまなデバイスやガジェット(小物)を駆使して五感に訴えるような創作物を指す。「部品や技術、ツールを隠さず、それらも含めてコンテンツとする」、「デバイスやガジェットの形で日常生活の中に入っていく」、「発想の背後に、日本的な感性とものづくりの伝統がある」という3点が特徴だ。
メディアラボでは、デバイスアート系の研究者やアーティストによる個展を連続して長期に渡って開催している。筑波大学教授の岩田洋夫氏を筆頭に、光学迷彩で知られる慶應義塾大学教授の稲見昌彦氏らが参加する「デバイスアートにおける表現系科学技術の創成」プロジェクトメンバーの作品をおおよそ1シーズンごとに切り替えて展示を行っている形だ。メディアラボにおけるデバイスアートたちは、全作品というわけではないのだが、触れられるのが特徴で、子供たちにも人気が高い。今回も、実際に触って音を出せるようになっており、夏休みを挟むこともあって、子供や明和電機のファンで賑わいそうだ。
今回の主役である土佐氏だが、1993年に明和電機を結成。パフォーマンスの際は青い作業服を着用しており、作品を「製品」、ライブを「製品デモンストレーション」と呼ぶ独自のスタイルで活動している。海外でも評価が高く、最近も7月10日・11日にスペインでの公演が行われたばかりだ。
展示構成は、テクノロジーの進化とデジタル技術について、4つのステップで音楽を体験しながら学べるという内容。ステップ1「機械通信時代 ~トントンくんでノック!」(画像03)は、スイッチ「トントンくん」(画像04)と、電磁石を使ったビートを刻む装置である「ノッカー」(画像05)を取り付けた音源をつなぎ、少々変わった打楽器を操作する。
ステップ2「電子通信時代 ~おもしろスイッチでノック!」では、厚紙とアルミ箔で作った手作りのスイッチなどを組み合わせて(画像06)、ノッカーを操作する内容だ(画像07)。
ステップ3「自動機械時代 ~エレビートでノック!」は、手動式の記憶装置「エレビート」(画像08)を用いて、あらかじめ定められたシーケンス(操作手順)でノッカーを動かすというもの(画像09)。横にはそれとは別に大きな振り子を利用した装置も用意されている。
そして最後が、ステップ4「コンピューター時代 ~コンピューターでノック!」。ステップ3のエレビートの機械的シーケンスを電子的に置き換えた「エレビートタッチ」(画像10・11)による自動演奏を楽しめる。どのタイミングでどれをノックするかをiPadを使って指定でき、うまくできるとインダストリアルミュージック的なリズムを自分で生み出すことができるという具合だ。
そのほか、明和電機製の電子楽器「オタマトーン」(画像12)、同じく明和電機製の愉快な音が出るゼンマイ人形のオモチャ「ノックマンファミリー」なども展示されている。
オープン前日の29日にはメディアおよび関係者向けの内覧会が実施され、土佐氏も来場、あいさつを行った。自身の作品については「自分の作品はA級じゃなくてB級なので『BART』(バート)と呼んでいます」とし、デバイスアートとは、「自分で作った楽器を普及させたいという思いが募ってきた時に出会ったのが、デバイスアートでした」と出会いを語った。今回の個展に関しては、「ショールームだと思っています(笑)。ですので、見に来られたメーカーの方が、『うちからこれを出したい!』と思ってもらえると嬉しいです(笑)。という日本科学未来館の使い方はありですか?」などとし、周囲を笑わせた。また、報道陣と関係者のみの内覧会にもかかわらず、製品デモンストレーションを実施。絶妙なトークを交えつつ、オリジナル楽器(画像01・13・14・15・16)を用いて、独特で非常に貴重なライブを行った。なお、通常時はステージで自動演奏を1日に数回行う。そして実施時期は未定だが、土佐氏を呼んでのトークショーなども検討しているとした。
展示閲覧は特に追加料金はなく、日本科学未来館への入場料のみとなっている。入館料は、大人600円、18歳以下は200円となっている(団体割引などあり)。