日本科学未来館で見て撮影してきた
「おかえり、はやぶさ カプセル公開イベント」
8月26日から30日までの5日間に渡り、日本科学未来館の1階シンボルゾーンにおいて、無料の「おかえり、はやぶさ カプセル公開イベント」が開催された。カプセル(エンジニアリングモデル)やパラシュートなど、はやぶさが自らを犠牲にして無事地上に送り届けた機器などを撮影してきたので紹介する。
相模原市立博物館やJAXA筑波宇宙センターでまず開催されて大変な混雑となり、さらにはわずか1週間前にも同じ東京の丸の内で5日間(8月15~19日)開催されて4万2874人を記録しただけあって、初日の26日の午前最初の10時から10時30分の回は落ち着いた様子。丸の内からは整理券が配布されるようになったのもあり、それほどの混乱もなく、数百人が同館のシンボルであるGeo-Cosmosの下に並んだ。当初は、午前中とはいえ暑い中屋外まで長蛇の列ができるのではないかと心配されたが、大丈夫だったようである。ちなみに、Geo-Cosmosを地球とすると、小惑星イトカワはたったの0.3mm、距離は160km先。はやぶさは、同館から長野県諏訪湖にあるボールペンの先ほどのサイズのものに着地して、帰ってきたという具合なのである。
展示されたのは、「搭載電子機器部」、「インスツルメントモジュール」、「パラシュート」、「エンジニアリングモデル」の4点(展示はすべてこの4点)。搭載電子機器は地球~の指令を受け取るなど、カプセルの心臓部分。加速度センサが搭載されており、秒速12km/hという高速度で大気圏に再突入したカプセルのパラシュートを開くタイミングも完遂した。着陸時の衝撃に耐えるよう補強されている。
インスツルメントモジュールは、カプセルの本体部分。中心には、小惑星イトカワのサンプルをいれておくための円筒状のサンプラコンテナが収容されている。また、はやぶさとカプセルを結ぶ「へその緒」と呼ばれるケーブルの燃え残りが見られるほか、地上で誰かに拾われた時のための住所と電話番号が書かれていた部分も見られる(カプセル奥側のオレンジ色の部分で、内容まではさすがに確認できない)。ちなみに、そこには2003年03月の打ち上げ直前にこっそりかかれた落書きが残っているそうである。
軽量で強靱な十字形のパラシュートは一見するときれいだが、実際に使用されたもので、予定通り上空約5kmで開いた。レーダーで発見しやすい工夫として、反射しやすい金属メッシュが取り付けられている(画面左側の黒っぽい部分)。
そして最後のエンジニアリングモデルだが、これだけは実際に宇宙にいっていないもの。実際にはやぶさには使われなかったわけだが、地上試験では使用されたもので、実機と何ら変わらない作りとなっている。前述したように秒速12km/hという類を見ない高速度で大気圏に再突入するため、減速時に大変な高温にさらされたことは多くの方々ご存じのことだろう。その熱からサンプルなどを守るため、カーボンフェノールを材料としたアブレーターと呼ばれる耐熱材がヒートシールドとして前面(底面)に使われており、このエンジニアリングモデルも同じ素材を使用している。
なお、この後も宮城県角田市のJAXA角田宇宙センターで9月11日(土)・12日(日)に、近鉄百貨店阿倍野店9階近鉄アート館で9月17日(金)から21日(火)までそれぞれ無料でカプセルを公開。また、JAXAでは公益目的でカプセルの展示の協力機関を公募中だ(入場無料で、営利展示は不可)。今回は2010年11月中旬から2012年03月までの期間で展示可能な団体や法人ということで、募集期間は9月30日までとなっている。