東京大学、仏アルデバラン・ロボティクス社の
ヒューマノイドロボット「NAO」を30台教育用に導入
全長58cmの二足歩行ヒューマノイドロボット型プラットフォーム「NAO」を手がけるフランスのアルデバランロボティクス社は13日、東京麻布のフランス大使館内で記者発表を実施。同社CEOのブルーノ・メゾニエ氏も来日し、NAOのデモンストレーションや解説、そして同社のプレゼンテーションなどを行った。
また、それと同時に、同社が今年05月から開始している、NAOを使った教育パートナーシップ・プログラムにおいて、東京大学が世界で最初の参加者となったことも発表。同大学のNAOを導入した研究室を代表し、同大学大学院情報理工学系研究科知能機械情報学専攻ならびに工学部機械情報工学科教授の中村仁彦氏が「ヒューマノイドロボットNAOを用いた教育と研究を開始」と題した、プレゼンテーションも行った。まずは、その模様から紹介する。
今回、東京大学で導入したNAOは30台。中村氏と講師の高野渉氏の研究室が今回は代表として出席し、現在行っている研究の解説と、主要課題の一部によるデモンストレーションを披露した。同研究室では、ヒューマノイドロボットを中心に、特に人間モデルを用いて、人を理解し、人とコミュニケーションするロボット技術の開発にフォーカスした研究を行っている。主要な研究課題として、以下の6つが紹介され、デモの内容は今回は3番を含む4番の課題だった。
1.人間の神経筋活動の推定計算(マジック・ミラー)
2.身体部位の質量パラメータの推定法(ミステリー・スケール)
3.身体運動の分節化と分類による運動記号の生成(シンボル生成)
4.運動記号と言語記号を結ぶ情報処理(人間・ロボット・コミュニケーション)
5.人間の行動予測(クリスタル・ボール)
6.力反応型油圧アクチュエータ(アクチュエータ)
デモの内容については、ヒューマノイドロボットが、人間の運動観察を通じて運動記号(簡単にいえば、モーションのこと)を獲得すること、獲得した運動記号を用いて人間の行動を認識すること、自ら行動を生成し人間とのコミュニケーションを実現すること、という人工知能の一分野である学習機能を扱った内容となっている。運動記号と自然言語(人の話し言葉)を結びつける数理モデルを構築することによって、ヒューマノイドロボットが言語推論によって運動を生成することが可能となりつつある段階にあるという。
このほか東京大学では、NAOを使ったゼミとして、中村氏および高野氏が担当する平成22年度冬学期機械工学少人数ゼミ(工学部機械系2学科3年製対象)『ヒューマノイドにプログラムする姿勢と動きの中の「美」とは?』があることも紹介された。このゼミでは、ひとりひとりがNAOを1台用いて、身体の姿勢や動きの表現の美しさとは何かを考える内容となっている。ディスカッション、身体と認知に関する文献、ヒューマノイドロボットのプログラミングなどを通じて、姿勢と動きについて深く考え、楽しく実践することを目的としているそうだ。
会見で中村氏は、「今後は、この試みを含めたさまざまな努力を通じ、同専攻・同学科における知能機械情報学の教育環境を引き続き世界の最前線に保つことによって、我が国の将来を担う優れた人材と未来を切り拓くロボット先端技術を世界に送り出していく所存です」とした。
NAOは、株式会社アールティが国内総代理店を務めている。会見には同社代表取締役の中川友紀子氏も出席し、今回の東大のほかに、国内で最初に導入した慶應義塾大学、立命館大学、筑波大学、京都大学などがNAOを導入しており、今回の30台も含めると約50台が日本で利用されているということであった。また、世界レベルでは、30ヵ国約200の大学や研究機関が導入しており、約800台が販売されており、研究・教育を目的とする二足歩行型ヒューマノイドロボットとしては、世界で最も売れた1台となっている。