TOP >  最新ニュース >  先週のニュース >  ニュース記事2011年10月05日-b

金星探査機「あかつき」、姿勢制御用エンジンで金星へ
軌道制御用メインエンジンは燃焼器がほぼ全壊の模様

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金星探査機「あかつき」、9月07日と14日にメインの軌道制御用2液エンジン(OME)の試験噴射を行ったのは、以前の記事でお伝えしたとおり(こちらこちら)。14日の2回目の噴射に関する簡易リポートの段階で、1回目も2回目もともに芳しくない状況であったわけだが、どうやらメインの軌道制御用2液エンジン(OME)の燃焼器(ノズル)は全壊のようである。詳細なリポートは、JAXAが9月30日に公式サイトに掲載したリポート(PDF)「『あかつき』の金星周回軌道投入失敗に係る原因究明と対策について(その4)」をご覧いただくとして、ここでは大まかに説明する。

OMEは正常な状態であれば約500Nの推力を発生し、スロート部の部分的な破損だけなら約350Nは確保できるという想定だったが、もはやノズルは形を残していないようで、機体表面で非効率的に燃焼するため、たったの40Nしか推力が得られていないという(右下の画像の状態)。結果、姿勢制御用1液エンジン(RCS)の23N×4の合計推力の方が倍以上ということで、RCSを使って金星へ向かうこととなった。

そのため、RCSでは使用しない酸化剤を10月にすべて排出。11月に近日点を通過する際に軌道制御を実施し(11月にできない場合は2012年06月の近日点通過の際に行う)、そこから金星へと向かうことになる。2015年11月に金星周回軌道に入るための「金星軌道再会合マヌーバ」を実施する。RCSは性能、耐久力などの面で問題がないようで、金星周回軌道にはたどり着ける予定だ。

ただし、RCSでは推力が不足するため、当初の予定である周期30時間の観測用の楕円軌道を取ることは不可能。当初の予定の何倍もの高度になる遠近点を通過する軌道となる(左上の画像)。RCSの推進性能や残念料によって投入軌道は変化するため、現在はまだ投入軌道は決定されていない。科学コミュニティにおける検討を踏まえ、観測成果が最大となる軌道へと投入することを目指すとしている。

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そして、残る問題は観測機器やあかつきそのものの耐用年数。2015年の到達というのは、設計条件を超える熱環境にさらされ、想定寿命を超える運用となる。JAXAでは、最大限の緩和を考慮しつつ運用を実施していくとしている。

なかなか厳しい状況ではあるが、必ずやこれまでにない観測データを、例えわずかだとしても地球に送ってくれるものと期待しよう。

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