日本科学未来館で衛星「だいち」の映像も利用した
4K×4Kの全天周3D完全新作映像の上映開始
日本科学未来館は24日から、同館6階にあるドームシアターガイアで3D大型映像作品「FURUSATO-宇宙からみた世界遺産-」の上映を開始した。上映時間は38分で、毎日13時より1日1回上映。整理券が必要で、配布は朝10時からとなっている(全112席)。追加料金はなく、同館への入場料のみ(大人600円、18歳以下200円)で鑑賞可能だ。
ドームシアターは、「Atmos」(Allsky Three-d Movies for Sentientsの略称およびAtmosphereも兼ねる)と呼ばれる全天周・超高精細立体映像システムを用いて3D映像を上映している(500万個の星を投影する「MEGASUTAR-II cosmos」によるプラネタリウムも上映)。Atmosは2009年01月に国内で初めて同館に導入され、世界でもハワイのイミロア天文教育センターに次いで2例目だ。
性能は、まず画面解像度がフルHDの8倍に相当する4K×4K。表示画素数は約1150万ピクセル(有効画素数)で、単体光出力は1万ルーメン(光の束の単位で記号はlm)という性能持つ。立体視を実現する機構には分光式フルカラー立体視方式を採用しており、専用設計の超広角レンズを利用した4基のSXRD方式プロジェクターを用いて左右それぞれの眼のために前後分割投影を行ない、3D映像を実現している。ドームスクリーンに投影するには1台では間に合わないため、前後に分割して2台でカバーしているというわけだ。
また同作品は、制作費が安価な点もポイント。劇場用3D映像投影システムとして知られているアイマックス用の作品の制作費と比較すると、今回は10分の1ほどで作られたという。全国の科学系ミュージアムなどからも安価な3D映像作品の要望があるそうで、同館副館長の中島義和氏によれば「本作品なら無料、もし追加料金を取るとしても100円程度に抑えて上映できるはずです」とした。
内容は、地球の営みを残す自然遺産、人類の文明が作り上げた文化遺産などの世界遺産の保護に協力する地球観測衛星「だいち」の取り組みがテーマとなっている。だいちは、本体約6.2m×3.5m×4.0m、太陽電池パドル約3.1m×22.2m、PALSARアンテナ約8.9m×3.1m、質量約4000kgという世界最大級の地球観測衛星。地図作成、地域観測、災害状況把握、資源調査などを目的に2006年01月にH-IIA8号機で打ち上げられた。地球観測用のセンサとしては、標高など地表の地形データを読み取る「パンクロマチック立体視センサ」(PRISM)、土地の表面の状態や利用状況を観測する「高性能可視近赤外放射計2型」(AVNIR-2)、時間・天候を問わずに陸地の観測を行える「フェーズドアレイ方式Lバンド合成開口レーダ」(PALSAR)の3種類を搭載。今回の軌道上からの地表の立体映像は、パンクロマチック立体視センサによる画像が利用されている。
作品の映像面での特徴は、タイトルバックなどを除いてすべて実写で撮影されている点。3D映像作品でよく見られるCGで加工した映像などは一切含まれていない。だいちが宇宙から撮影したさまざまな地球の姿、地上から撮影されたニュージーランドの巨大な樹木が生い茂る森林やフィヨルドなどの自然風景、エジプトの巨大ピラミッド、日本の厳島神社と負の遺産である原爆ドームなどが、現地の子供たちの生活なども絡めたストーリーで描写されていく。なお、ストーリーを担当したのは、映画「おくりびと」で第32回日本アカデミー賞脚本賞を獲得した小山薫堂氏。小山氏による全編オリジナルとなっている。また、日本で登場する子役は、「おくりびと」で主演した本木雅弘氏の実の娘の内田伽羅(きゃら)さんが担当した。
さらに、同作品は平面スクリーン用に一部修正された形だが(投影範囲が狭くなる)、3Dのままでの一般公開も決定。6月19日より全国のワーナー・マイカル・シネマズで上映される。3D特別料金として、大人1300円、子供1000円となっている。
なお、スタッフは以下の通り。24日の一般公開に先立って22日に行われたプレス向け試写会では、小山氏並びにTBSビジョンの小川直彦氏も挨拶を行った。