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ASIMO 10th ANNIVERSARY スペシャルイベント
ダンスコラボや開発者広瀬氏らによるトークショー

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10月30日(土)から11月03日(水・祝)までの5日間に渡り、東京青山の本田技研工業株式会社(以下、ホンダ)本社ビル1階のショールーム「Hondaウェルカムプラザ青山」(以下、ウェルカムプラザ)で、「ASIMOスペシャルウィーク」が開催中だ。なぜこの5日間がASIMOスペシャルウィークかというと、ASIMOの誕生日が10月31日だからである。2000年10月31日に、研究所内で初めて歩いたことから、この日が誕生日となっているのだ(公式に発表されたのは2000年11月20日)。

そこで、満10歳の誕生日として、ホンダ系のサーキットであるF1でお馴染みの鈴鹿サーキットや、2輪のMotoGPやアメリカのインディーカーシリーズなどを開催しているツインリンクもてぎでは、10月30日・31日にバースデースペシャルイベントを実施。そしてウェルカムプラザでは、スペシャルイベントの第1弾が実施された。

最初は、まずASIMOが満10歳となったことを、そして色々なことを体験できたこと、それも大勢の方が応援してくれるからこそ、という主旨の内容で、メッセージを披露。メッセージを読み上げた様子は、ぜひ動画でご確認いただきたい。

そしてこの日の目玉のひとつが、スペシャルゲストのパパイヤ鈴木氏。ASIMOの得意技のひとつがダンスということで、1機とひとりによる競演となったのだ。鈴木氏は、ASIMOのひとつまえのプロトタイプの「P3」がニューヨークの地下鉄の階段を上がって出てくるのを見て、「無限の可能性を感じましたね」という。また、新しいダンスを思いついても、よく忘れてしまうことがあるそうなので、「ASIMOに覚えておいてもらえたら便利ですよねぇ~」と1台もらって帰りたそうなコメントも出して、場内を喜ばせていた。

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なお、P3はP2とともにツインリンクもてぎの展示施設「Honda Collection Hall」から期間中に特別に移送され、ウェルカムプラザ内で実機が展示されている(そのほか、初代ASIMOのモックアップモデルも展示されている)。首都圏で展示されることはなかなかないので、未見の人は一度足を運んでおこう。日本のロボットの歴史の一端を見られるいい機会となっている。

そしてダンスの競演だが、まずはダンスバトル形式からスタート。ASIMOと鈴木氏が交互に2回ずつダンスを披露した。ASIMOはお馴染みの全身協調機能を駆使したダンスを披露し、パパイヤ鈴木氏は最初がロボットチックに直線的に動くアニメーションダンスを、そして2回目は激しいアクションのダンスを披露し、拍手を浴びた。

その後に、ASIMOの生みの親として知られる本田技術研究所主席研究員の広瀬真人氏と、現在のASIMOの開発の責任者として広瀬氏の後を引き継いだ同研究所第5研究室室長主任研究員の重見聡史氏も登壇。両氏と鈴木氏、ASIMOが並んでのトークショーが行われた。ASIMOが10歳を迎えたということに対して、広瀬氏は「まさか10年もASIMOがみなさんに親しんでもらえるとは考えてもいませんでしたので、自分のことよりもすごく嬉しいです」とコメント。広瀬氏と共にロボット開発を続けてきてASIMOを生み出したひとりである重見氏は、「技術的な興味があってロボットを作ってきたのですが、こうして10周年を迎えて、みなさんに集まってもらってお祝いをしてもらえるということは、すごく嬉しいことだと思っています」とした。

なぜASIMOを作ったのかという鈴木氏の質問に対しては、広瀬氏が「ヒトは山の上でもジャングルでもどんなところにも移動できます。我々の会社は移動するものを作っているので、ヒトと同じようにどこにでも移動できる機械ができたら、すごいんじゃないかということで、ヒトの形をしたロボットを作ったのが最初ですね」。また、「まずは何から取りかかるんでしょう?」という質問に対しては、「ヒトと同じ形をしていると、手で何かをさせたりという方向に行き易いのですが、当時は、人間と同じように機械に2本足で歩かせるというのが非常に難しい時代でした。そこで、まずはヒトと同じように2本の足でしっかり歩けるようにしよう、というのが始まりでしたね」。

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 そして、ASIMOがボールを蹴られる機能があるという話になり、鈴木氏は「お父さんが忙しい時に、ASIMOに『ちょっとサッカーの相手をしてやってくれ』と子どもの相手を頼める時代が来るかも知れませんよね」と、やっぱり自宅に1台ほしそうな感じ。さらに話が発展し、「ASIMO11人対ASIMO11人によるサッカーの試合も見てみたいですねぇ」と夢を語る。ASIMOは、これまで特別なステージや新機能の発表会などで最大3機ほどが同時に行動したりしたことはあるが、最大22体が動く様子は、実に壮観に違いない。ロボット好きでなくても見てみたいところだろう。ちなみに、ASIMOの総数は公表されていないが、ウェルカムプラザおよび本社2階受付ロビー、鈴鹿、もてぎ、日本科学未来館、秋葉原のStudioASIMOに1台から複数台がいて、さらに海外にも複数の国にいるそうなので、2005年発表の新型(2代目)ASIMOだけでも少なくとも約10機はいるものと予想される。2000年発表の初代を含めれば、少なくとも野球チームは作れそうだし、サッカーチームだって決して無理ではないのではないだろうか。

そうしたサッカーチームの実現など、これだけ機能が上がってきているのだから、そのうち可能になるのではという質問に対し、今度は重見氏が「ASIMOが、そうした身近な存在になれればいいなと思っています。映画やドラマなどの世界のように、現実でもロボットがみんなの中で活動できるようにしてきたいです」とした。さらに、鈴木氏は実際にダンスを一緒に踊ってみて、「人間とロボットの境目を埋める何かがあると思いました」という。「そのうち、ASIMOぐらいの身長の子どもたちの中に混ざって踊ったら、どれがASIMOだかわからなくなる時が来るんじゃないかと思いますね~」とも。

「ASIMOはどこまでいってしまうんですか?」という質問に対して広瀬氏は、「僕らですらASIMOが動いているのを見ていると、本当は人が中に入っているんじゃないかと錯覚してしまう時がありますね。見ていて、楽しんでしまうといいますか。それぐらい親しみの持てる機械というのはなかなかないと思いますね。そういう意味では、人間とはまったく同じようにはならないと思うんですけど、やはり人間を越える機械的な機能の部分と、あとは『そばにいてくれたらなんとなくいいな』というふたつの部分を残していけるような面白い機械ができたら、あるいはそういう風に成長していってくれたら、非常にありがたいなと私は思っています」。

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それを受けて、鈴木氏は自身が足をケガしてしまって動けない時があったそうで、お子さんもまだ1歳で話も通じず、携帯を取ってほしい時に苦労したそうだが、ASIMOがいてくれたら楽だったろうなと振り返る。しかし、そこでひらめいたようで、「一家に1機という時代なら、携帯を取ってもらうのではなくて、ASIMOに連絡を付けてもらえばいいんだ! そうなりますよね?」とさらに期待を膨らませていた。さらに、ASIMOと踊っていて、目があうと、「どきっとするんですよ」という。見られているという感じがするそうで、「一緒に踊ったというのもあるでしょうけど、今はとても機械という感じがしていない部分がありますね」。

そして重見氏が広瀬氏の後を受け継いだことへのプレッシャーに関する質問も。重見氏はプレッシャーはもちろんいろいろな面であるそうだが、それよりも「こうしてお客さんが、しかもお子さんもいっぱい来てくれて祝ってくれるようなロボットが生まれたということが非常に嬉しいですね。そういう意味では、お子さんたちと遊べるようなロボットですとか、一緒にいて楽しいなと思えるようなロボットを作れればいいなと思っています。それが逆にプレッシャーではなくてモチベーションになって、いろいろなものを生み出していけるかなと感じています」として、トークショーは終了となった。

このあと、鈴木氏は「世界で初めてASIMOと踊ったダンサー」ということで、ギネス記録になるのではということで、「マスコミの皆さん、働きかけてください」と頭を下げていたが、残念! 実は、すでにASIMOと競演したダンサーはいるのだ。2007年にツインリンクもてぎの施設のひとつファンファンラボ(2010年03月まではここでロボット系の展示がされていた)で開催されたイベント「Robot World」で、当時まだ女子小学生ながら天才的なアニメーションダンサーといわれた「ストロングマシン2号」さんと競演しているのである。ただし、その時は初代ASIMOとの競演だったので、新型ASIMOと競演したダンサーは鈴木氏が初ということは付け加えておく。

さらに、今回は、内容を刷新した新デモンストレーションが披露。構成が変わっており、頭からすべて収録したので、動画をご覧いただきたい(収録場所を左右変えて2本収録)。

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それからホンダの社会福祉活動の一環として同社スタッフもしくはOB・OGが手弁当で参加して行っているイベントのひとつ、小学生以下向けのダンボール工作キットを使ったものづくり体験教室「ドリームハンズ」も開催された。非売品のダンボール工作キットを、子どもたちがマンツーマン的に先生に教わりながら作っていく内容だ。キットは5種類用意されているが、今回はその中でも最も簡単なエントリー用である、3頭身の非常にかわいい「ミニASIMO」のみが用意された(足が長いために難度が高い「ASIMO」もある)。ちなみに、そのほかはフォーミュラーカー、ステップワゴン(ホンダのミニバン)、スクーター。

なお、ASIMOウィーク最終日の11月03日にはスペシャルイベント第2弾として、13時30分から「ASIMOデザイントークショー」を実施。また、誕生日当日いっぱいまでイラストや写真の募集を受け付けていた「ASIMOフォトモザイク」は、11月に完成品が披露される予定。そのほか、スマートフォン向けアプリケーション「Run with ASIMO」も「ASIMO 10th ANNIVERSARY」のスペシャルサイトで公開される予定となっている。また、今回は3代目や新技術の披露など、一切新要素は発表されなかったが、ASIMOに関しては11月、12月に発表されることが比較的あるので、今年残り2ヶ月、何かがあるかもと期待して待とう。

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