日本最高峰の二足歩行ロボットバトル競技会
「第19回ROBO-ONE in 川崎」開催、優勝したのは夫婦愛!?
10月9日に川崎市産業振興会館で決勝トーナメントが開催された、日本最高峰の二足歩行ロボットバトル競技会「第19回ROBO-ONE in 川崎」。当初は、東北地方太平洋沖地震から1週間後の3月19日・20日を予定していたが、当然、延期となった。そして節電の関係で夏も実施見送りとなり、この10月08日(土)に初心者向けの軽量級部門「第3回ROBO-ONE Light」(記事はこちら)と併催する形で予選トーナメントを実施し、9日に決勝トーナメントが開催されたというわけだ。予選の結果に関しては、こちらでリポートしている。なお、前回大会の「第18回ROBO-ONE in 新発田」が2010年8月28日・29日の開催だったため、1年以上を開けての開催となった。
77台がエントリーし、ダントツの12.88秒を記録した「automo05(Go-Wan)」を筆頭に予選9m走を勝ち残った47台+第3回ROBO-ONE Lightの優勝者を加えた48台が決勝トーナメントに進出。1位から16位までが2回戦から登場するシードが用意された変則トーナメントだ。ただし、予選9m走のタイム順の順位がバトルに強いというわけではないので、案外序盤から強豪同士がつぶし合ったり、早い段階で同門対決が発生したりという具合だ。
さすがに日本中から猛者が集まってくるので、早くも準々決勝辺りから、決勝戦で見たいようないいカードだらけとなってくる。そうして、準決勝に進出したのが、「HammerHead」(大阪産業大学ロボットプロジェクト)、「スーパーディガーIII」(ひろのっちさん)、「レグホーン」(NAKAYANさん)、「ガルー」(くままさん)の4台。関西勢がふたり(HammerHead、レグホーン)、関東勢がガルー、九州勢がスーパーディガーIIIと、ちょうど地域がばらけた感じだ。この3地域に加え、中部地区が日本でも特に二足歩行ロボットバトルが活発な地域である。
準決勝第1試合は、HammerHead対スーパーディガーIII。ほぼ同じ体格のロボット同士の対決となった。HammerHeadのオペレーターのA4さんは、今回唯一準決勝まで進んだ大学生。学生最強といわれていた彼だが、昨年、関西四天王入りし、非常に勢いに乗っており、総合でもチャンプになれる可能性も出てきた。HammerHeadは黒と銀のヒーローロボットモノなら敵の指揮官クラスが乗っていそうな結構見た感じが迫力がある機体。一方、スーパーディガーIIIのひろのっちさんは第17回ROBO-ONEを制した強豪で、赤く、スマートな感じのヒーローロボットタイプ。試合は、HammerHeadが勢いに乗ってスーパーディガーIIIを倒すかと思われたが、そうはいかない。機体の機動力と攻撃力の高さを披露しつつ、強豪オペレーター同士ならではの、絶妙なポジションの取り合いと距離の詰め方が展開した素晴らしい勝負に。結果、HammerHeadが勝利した。
第2試合は、レグホーンvsガルー。レグホーンはアロハシャツを着たニワトリケンカ番長という関西らしいキャラクターの立った1体で、関西四天王のトップ。会場でも子ども人気が非常に高い。一方、ガルーは正統派の格闘ロボットという感じで、取材する度に腕の形状が変化していたり、新しいパーツが装着されていたりと、改良に余念のない機体だ。これまで両者ともに各地の大会で何度も手を合わせており、実力伯仲の強豪同士である。ただし、ROBO-ONEだけでの戦績を見ると、ガルーは優勝のほか、準優勝、3位も。一方、ROBO-ONEでは4位が最高位で、今度こそを誓う。両者ともに勝ったり負けたりがあるので、どちらも有利不利はない。おそらく、互角というところだろう。しかし、逆に勝てる可能性がある、今度こそ、という思いが強すぎたのか、レグホーンが少々攻め急ぎすぎ、ガルーが勝利した。なんでも、これまでの全試合で、小林雅司オフィシャルレフリーが子ども受けもあって、「OK?」と聞くと、「コ(オ)ケッ!」とニワトリの鳴き声でレグホーンが返していたのだが(レグホーンは色々としゃべれてにぎやか)、この時だけ返し忘れてしまったらしい。NAKAYANさんの緊張が伺えるエピソードであった。
レグホーンは連続出場となる形で、3位決定戦のスーパーディガーIIIvsレグホーン。レグホーンにとっては初の表彰台がかかるこれまた緊張の1戦。試合は、ポジション取りの駆け引きに加え、敵の攻撃を自分の攻撃で弾いたり、敵の有効打になりそうな攻撃を受けた直後にうまくしゃがむなどして体勢を直して加えられた力をいなすといった、両者が非常に高度なテクニックを披露する展開に。しかし、ここでもちょっと焦っていたか、ベテランのNAKAYANさんらしくない背中を絶好の確度でさらしてしまうなどのスキを見せてしまい、3-0のストレート負け。チャンスを確実にものにできる冷静なファイトを見せたひろのっちさんのスーパーディガーIIIが3位に輝いた。
そして、いよいよ決勝戦。HammerHead対ガルーだが、なんと入場直後にガルーの左ヒザが完全に故障しているのが判明。人の格闘技の場合、トーナメントの途中で両者KOなんて場合は、リザーブ選手が途中出場するということもあるが、ROBO-ONEではそのようなルールになっていない。また、1対1で勝負するD1グランプリやドラッグレースなどのモータースポーツ系では、規定時間内にスタートラインに着けなければ決勝戦であろうとなかろうと負け、というルールが多く、本来はROBO-ONEもそのルール。ただし、決勝が行われずに不戦勝で優勝が決まってしまうことをHammerHeadのA4さんが「ちゃんと闘いたい」として、自らも修理で手伝い出す。畑野雅永審査委員長も「何時まででも待ちます」宣言。セコンドのくままさんのご主人であるくぱぱさんは、最終的にガルーの兄弟機であり自分の機体である「クロムキッド」からパーツを移植する作業を実施することにし、左ヒザから下の緊急パーツ交換を開始した。
ガルーとクロムキッドの仕様は、今回は色が違う程度(ガルーは赤+銀だが、クロムキッドは緑+銀)のほぼ同型の機体となっており、パーツ交換が容易というわけだ。ただし、短時間で行うにはやはり大変なため、その内、スーパーディガーIIIのひろのっちさんや、予選1位通過した「automo05(Go-Wan)」のholypongさんら九州勢を初めとする大勢の選手がサポートに。ライバルでもあるけど、仲間でもあるというこうした温かい光景が、ROBO-ONEの魅力のひとつだろう。しかし、仮に競技会としてもっと発展した場合、「勝つことのみが目標」という参加選手が多くなってしまうと、こうした光景は失われてしまうだろう。助け合いの精神を体現した素晴らしい光景なので、発展も望みたいけどこのままでもいてほしいような、少々考えさせられるものであった。
そして、18時前には修理が完了し、なおかつクロムキッドの方が準々決勝で敗退していて移植した左ヒザから下のパーツの消耗度合いが少なかったせいか、若干動きがよくなった状態で復活(ガルーキッド?)。両者高速に動き、自機の攻撃の有効射程内にとらえるべく激しい駆け引きが展開し、男気を見せたA4さんのHammerHeadが勝利するのではないかと誰もが思ったはずだが、ガルー強し! A4くんを返り討ちにし、まだ前例がひとりしかいないという学生王者の誕生を阻止し、ガルー&くままさんのコンビが2回目の王座獲得と相成ったのである。
なお、HammerHead&A4さんは敵に塩を送って負けてしまったわけだが、本人がちゃんと決着を付けたかったということだが、素晴らしいフェアプレーを称えたい。ちなみに、西村輝一ROBO-ONE委員会代表に正式な許可を得たので、第19回ROBO-ONEの決勝と予選を照らし合わせて、学生ランキングをロボタイムズで後ほど掲載する予定。ひとまず先に、学生王座としてHammerHead&A4さんに決定したことを宣言しておく。今後、各地の学生たちは、A4さんを倒すべく腕を磨いていただきたい。
一方、王座に就いたくままさんは、大勢の人のサポートで決勝戦を不戦敗にならずに済み、なおかつ優勝できたことを感謝の言葉とした。そして、くぱぱさんに対しては、消え入りそうな言葉で「本当に、いつも感謝しております」と、本当に感謝しているのかどうなのか確認したくなるようなお礼の言葉(笑)。なにはともあれ、大団円のラストとなった。
なお、次回大会は20回大会は、ROBO-ONE10周年記念大会となる。3月開催の予定で、大きなイベントも検討中ということで、また決まり次第、ロボタイムズでもお伝えしていく。