【ロボット名鑑】NASA+GM「Robonaut-2」
史上初の宇宙用ヒューマノイドロボットの第2世代
NASAとゼネラルモーターズ(以下、GM)が2007年から共同開発し、2010年02月に公開した宇宙用ヒューマノイドロボットの第2世代「Robonaut-2」(以下、R2)。スペースシャトル・ディスカバリー号最後のフライトとなる「STS-133ミッション」に搭載され、当初は2010年11月02日に国際宇宙ステーション(以下、ISS)へと向かう予定だった。順調にいけば、2011年01月には設置が完了してテストを開始する予定だったが、天候不順や外部燃料タンクにクラックが見つかるといった問題で打ち上げ順延が重なり、年内の打ち上げは見送られてしまったのである。12月06日に発表されたアナウンスでは、2011年02月03日以降ということだ。
一時は日本時間で12月18日(米国東部標準時間で17日20時51分)の打ち上げも予定されていたのだが、これでR2の活躍はしばらくお預け。そこで、ここではその活躍を期待していた人のために、「ロボット名鑑」として改めてR2のことを紹介したい(R2のファクトシートはこちら英語:PDF)。
R2は、1997年からNASAが開発を行っている宇宙用ロボットの第2世代で、上半身のみヒューマノイドの構造をしているのが特徴。ISSなどの狭い空間でも人のすぐ横で働けるよう安全に配慮して開発されており、実際にISSで乗組員の支援をしつつ、宇宙での運用のテストやデータ収集を行うことを目的としている。ちなみに、第1世代の「R1」は車両型の下半身にヒューマノイドの上半身を搭載したデザインで(詳細はこちら:英語)、こちらはNASAが独自で研究開発を行ってきた。
R2は、当面の間は米国実験棟「ディスティニー」内に固定されて運用されるが、将来的にはISS内のほかの場所や船外にも活動領域を広げる可能性もある。最終的には、ISS周辺の船外活動だけでなく、そこから離れて人工衛星の修理をしたり、さらには月や火星など遠隔地への有人探査ミッションで飛行士の支援をしたり、先行して現場で飛行士の到着までに下準備をしたりといったことへの利用が想定されている。
R2は、オペレータによって操作することもできるが、あらかじめプログラムしておくことで、ある程度は自動で動かすことも可能だ。コントロールに関しては、R1からR2への過程で最も重要な研究課題とされた部分で、結果、オペレータが常時操縦する必要がないレベルを実現した。まだ人に口頭で指示を受け、自分で目標物などを認識し、その上で作業工程を考えて実施するというようなレベルには到達していないが、今後はそうした新しい機能を持たせるため、R2の双子のもう1台が地上でさまざまなテストを行う予定だ(R2は2台開発されており、1台がテスト機として地上に残る)。段階的に視覚センサや認識プログラムなどの機能を向上させ、地上で良好な結果を得られたら、随時ISSに運ばれたR2もアップグレードしていくとしている。ちなみにアップグレード計画の中には、下半身を装備することも検討されているという。なお、最終的な変更はあるかもしれないが、ISSに運ばれたR2は、地上に戻されることはないそうだ。恒久設置となり、ISSと運命を共にするということである。
運び込まれた後の具体的なスケジュールだが、実は、ISSに到着してもすぐディスティニー内に設置されるというわけではない。当初の予定だと2011月1月にセットされるということだったので、現状だと、少なくとも3~4月になるものと思われる(ほかに優先順位の高い作業がいくつかあるため)。初期の機能試験をすべて終了したら、まずは軽い作業を人に代わって行っていく予定だ。手先が器用に作られているので(片手の指だけで12自由度ある)、工具や機器を把持したり、空気フィルタの掃除などを行うことなどが計画されている。
また、ロボットが宇宙に行くことで何よりも大変なのが、太陽風や宇宙線などの放射線の影響が地上とは比べものにならないほど強くなること。生物よりも機械の方が放射線に対して強そうなイメージがあるが、実は近年の電子機器は生物以上に放射線に弱かったりする。特に、最新のCPUは複雑で小型化が追求されているため、放射線の影響で誤作動や故障を起こしやすい。そのため、R2の搭載CPUはPower PCと枯れたものを利用している上に、R2自身のボディ外装の素材などを工夫して放射線耐性を高めてあるという。また、ステーション内の雑音が増えないようにファンを静音性の高いものに変更してあったり、地上とは異なって直流を利用するISS内の電源システム用にR2自身の電源も対応させてあったりと、宇宙空間およびISS用にいろいろと工夫がされているのだ。なお、スペックは以下の通りだ。