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編集長コラム「デイビーのひと言」番外編:確実に泣けます!
映画「はやぶさ/HAYABUSA」鑑賞リポート

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10月01日(土)から20世紀フォックス映画の配給により全国ロードショーとなる映画「はやぶさ/HAYABUSA」(監督:堤幸彦、主演:竹内結子、西田敏行)。8月04日にプレス向け試写会がスペースFS汐留で行われ、自分も観てきましたのでリポートしたいと思います。もしかしたらテンションが上がりすぎで、リポート記事というよりは、小学生の感想文状態かも知れません。しかもネタバレも結構あります。でも、思い切って書きたいことを書かせてもらいます。

まずいいたいことは、「間違いなくめっちゃくちゃに面白かった!」ことです。話題作だから太鼓持ちをしているのではないかと疑われるかも知れませんが(苦笑)、そういううがった見方をして観に行かないと絶対に損をします! 個人的にはこの場面はもうちょっとブラッシュアップできたのではと思うところもひとつふたつありましたが、はっきりいって些末です。重箱の隅を突くという言葉がありますが、普通の重箱なら目立ってしまう隅でも、一辺の長さが地球の直径ぐらいある重箱だったら、気にする必要ないでしょう(笑)。変な例えですが。

「はやぶさ/HAYABUSA」に点数をつけるとしたら、98点をつけます。実質、これ最高得点ですよね。どんな作品であっても100点満点というのはあり得ないはずで、ダメとはいわないまでももう少しクォリティを上げられたのではと感じる部分とか、色々生じるわけですが、「はやぶさ/HAYABUSA」はそれらがたったの2点というところで、これは最少失点でしょう。これまで見てきた映画の中で「トランスフォーマー/リベンジ」(第3作の「トランスフォーマー/ダークサイド・ムーン」の間違いではないです)もえらく面白くて98点をつけていますけど、コンマ1桁台の点差で「はやぶさ/HAYABUSA」の方が上ですね。まぁ、本来なら比較するようなジャンルではないので、どっちが上とか下とかは意味がないかも知れませんが。ちなみに土俵がかなり近い感動系なら、今年は「スーパーエイト」を観ましたが、あれも面白くて感動の詰まったいい作品でしたが、「はやぶさ/HAYABUSA」の方が確実に上でしたね。フィクションとノンフィクションの差はありますけど。

とにかく、「はやぶさ/HAYABUSA」がすごいのは、中盤から早くも涙腺がゆるみ始めてしまうこと。終盤の大気圏再突入の辺りでそうなるのはわかるかと思いますが、もう中盤から油断すると涙が出ちゃうという、ストーリー。もちろん、最後は「はやぶさーっ! おかえりーっ!!」って叫びたかったぐらいです(笑)。その時はウルウルどころか、ほおを何筋も涙が伝います。ちゃんと帰ってきたのは知っているのに、どれだけ帰ってくるのが大変だったかを改めて見せられると、帰還できたことが奇跡だったのがよくわかります。そもそも、打ち上げの時点ですら大変だったわけですし。ひとりで観ていたら、間違いなく号泣していたでしょうねぇ(笑)。

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ちなみに、自分は一応「男は人前で泣かない」を実践しているので(守りきれない時もあるのですが)、大人になってからは少なくともどんなに泣ける映画やテレビアニメなどを観ても、映画館や家族の前ではこれまで表面張力まででなんとか踏ん張ってきました。が、今回ばっかりは、もうそんなの関係なし。〈はやぶさ〉と、〈はやぶさ〉を最後まで運用し続けたスタッフの皆さんの努力にもう涙、涙。「ドラえもん」ののび太のおばあちゃんものは、自分がおばあちゃん子だっただけに急所中の急所のネタだったりするのですが、それすらいつも必死に歯を食いしばって耐えてきました。でも、今回はもう止まりませんでしたね。いや、止めようとすら思わなかったというのが正解。そのまま素直に涙が流れるのに任せてしまったという具合です。ちなみに、周囲の他のメディアの方とかすぐ横にいらしたJAXAの関係者の方(いい席で観たかったので、招待席のすぐ隣を陣取りました)とかも、みんなグスグスやってました。

ここで誤解がないように力説しておきたいのは、「はやぶさ/HAYABUSA」はただ泣けるから映画として面白いというわけではないことです。それ以外にもいくらでもいい要素というか、感動できる作品に仕上げたいくつもの要素があります。まず、ちゃんとした役者さんのみが起用されていること(一部、役者が本職というわけではないらしい方もいるようですが、別段演技がダメというところはありませんでした)が大きい。主人公の水沢恵を演じた竹内結子さんはもちろん、もうひとりの主演である西田敏行さん(〈はやぶさ〉運用時に対外協力室室長だった的川泰宣氏がモデルの的場泰弘を演じた)、〈はやぶさ〉プロジェクトマネージャーの川口淳一郎氏がモデルの川渕幸一を演じた佐野史郎さん、カメラ開発担当の責任者の齋藤潤氏がモデルの坂上健一を演じた高嶋政宏さん、イオンエンジン担当責任者の國中均氏がモデルの喜多修を演じた鶴見辰吾さんなど、ちゃんとした役者のみで固められている。演技力ゼロのアイドルとかお笑いとかが起用されていなくて、本当によかったです。ちなみに中でも凄かったのが、やはり佐野さん演じる川渕プロジェクトマネージャー。もはやその似ている度合いは芸術の域という完コピぶりで、川口氏本人と並べばまさにジェミノイドごっこができるレベル(笑)でした。

とにかく、役者さんたちは皆〈はやぶさ〉の開発/運用スタッフへのなりきりが凄くて、演じている瞬間は、全員が本当に世界初の超困難なミッションで〈はやぶさ〉を開発しているんだ、飛ばしているんだという気概が伝わってきました。ずっと潤沢な予算を持つNASAですらやったことのない離れ業を、どうにかして成し遂げるんだという、人生をかけてまでプロジェクトを成功させようとしている気迫が伝わってくるのです。とにかく開発時は本当にプロとプロとの闘いで、意見の食い違いでぶつかり合う時の本気ぶりも、どちらもミッションを成功させようと思う中での本当に譲れない者どうしのぶつかり合いがわかるし、責任者が部下を叱咤する時も実に厳しいし、戦闘シーンではないのに銃弾が飛び交っているような緊迫感のある場面ばかりでした。中でも、〈はやぶさ〉の重量をもっともっと削らなければならないということで、既に限界も限界に来ているというのに、川渕プロジェクトマネージャーが冷徹にまだまだ重たすぎると突っ返すわけで、自分がいわれたら殴りかかるよなというすごいところも(劇中では、他のスタッフに取り押さえられていました)。人間関係を悪化させてでもミッションを成功させようとしているプロフェッショナル中のプロフェッショナルたちによる闘いにはしびれました。

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また、主要人物を演じた役者さんたちだけでなく、端役の人たちも立派にJAXAのスタッフを務めていたのもよかった。本当に〈はやぶさ〉の運用をしていたのではと疑ってしまうほど、どの人たちもリアルに演じていて、特に管制室でのシーンが印象に残っています。役名は特にないようですが、毎回コマンド送信を担当する管制スタッフの方は時刻や指定のコマンドを送信したことなどを口頭で伝えながら実行するわけですが、ドキュメンタリーにしか見えないほどです。JAXAのスタッフが監修したそうですが、こうまでリアルな空気が出るのも、端役にいたるまでのその場全員の気合いの入り方が違うからだと見て取れました。スタッフ役の人たちは全員が本当に自分たちは今この瞬間はJAXAのスタッフであり、〈はやぶさ〉を飛ばしているんだという信念のもとに、入魂の演技をしていたのが感じられ、素晴らしかったです。

それから、文部科学省の官僚で矢吹豊という人物を筧利夫さんが演じているのですが、こうした予算の部分にも踏み込んでいるところもよかった。〈はやぶさ〉が帰還時に一時的に音信不通になった時、「ロストした後に再発見された探査機はそれまで1機もない」ということで、どうやら文部科学省はこれ以上はもう予算をつけたくなかったようなのです。そこを、西田さん演じる的場室長が胃の痛くなる状況で〈はやぶさ〉が姿勢を安定させられる設計なので時間をかければ復旧するとなんとかのらりくらり的な感じで折衝し、さらに佐野さん演じる川渕プロジェクトマネージャーもウソも方便的に具体的な再コンタクトのための方策や再発見の確率のパーセンテージなどを提示して、文部科学省を納得させていったりするわけです。ドロドロというほどではないにしても、お金の部分にまで踏み込んで、どれだけ「税金を使って」探査機を飛ばすことにプレッシャーがかかるかというのがよくわかるのです。本当に〈はやぶさ〉が帰って来られて、しかも「日本の技術、ここにあり!」と世界にアピールできたり、日本中が明るくなったりと大きなプラスまでつけいてきたからよかったのですが、「失敗していたらほんと……」とシミジミしてしまいました。

というのも、これまたうまいのが、実は映画の中では周回軌道に乗せられなかった火星探査機「のぞみ」のミッションの最後も描かれているからです。火星への衝突回避を避けるため軌道投入を断念するわけですが(衝突確率1%を切れないと、滅菌処理度合いが低い探査機は惑星への衝突を避けないといけないという決まりがある)、その時も川渕プロジェクトマネージャーが指揮を執っていました。ミッションに失敗して税金が無駄になり(どんな失敗でも得られるものは完全なゼロではないので、失敗ではなく「成果」なのですが)、なおかつ応援している国民の期待に応えられない形で終わるというのがどれだけ痛いことかというのも教えてくれるのです。

そのほか、〈はやぶさ〉の打ち上げが延期に次ぐ延期で2003年05月こそ本当に本当の打ち上げと決まった時も大変でした。的場室長が、打ち上げを実現させるため、関連する5県の漁協関係者と折衝します。漁業関係者も自分たちの生活がかかっているわけで、「国がやっていることなんだからいうことを聞け!」と無理強いはできないわけですね。それを説明会で対外協力室のスタッフ全員で身体を張った解説で一生懸命説明して的場室長らが頭を下げまくり、そしてお酒につきあいまくります。弱い人もいるでしょうけど、お酒に強い人が多いことでは有名な九州男児たちであるところに持ってきて、さらにお酒に鍛え抜かれているであろう海の男たちを相手に、打ち上げの了承をもらうため、的場室長は飲んで飲んで飲みまくります。

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身体がデカイ割りにはてんでお酒の飲めない自分だったら1回目の酒宴でアウト確実。速攻でトイレに駆け込んでルストハリケーン(笑)状態か、下手したら急性アルコール中毒で病院送り決定でしょう。そんな修羅場を的場室長は一手に引き受け、それをくぐり抜けてちゃんと打ち上げ許可を取り付けます。もう、鹿児島の内之浦宇宙観測所から〈はやぶさ〉を載せたM-Vロケットが打ち上げられた時は(中盤なのですが)、それだけでウルウルとしてしまうのです。そのロケットの飛行シーンも、〈はやぶさ〉そのものが宇宙空間に放出されるまでは、結果を知っているのにそれでも手に汗握る状況で、たった今この瞬間に打ち上げていて、自分がJAXAの運用スタッフになったかのうような気分を味わえました。

とまぁ、まだまた書きたいことが山盛りで、打ち上げた後も山場は次々とやってきます。〈はやぶさ〉による小惑星イトカワへの着陸の行き詰まる管制室でのやりとり、最後の最後の試練となるイオンエンジン故障の危機とそれを救った、ご存じの解決法(実は、あれは裏技中の裏技だったのです)。それからJAXA公式サイトにある「〈はやぶさ〉君の冒険日誌2010(ただいま!)」(ページを開いた瞬間に涙がぶわっとくる内容!!)をベースにした、CGによる〈はやぶさ〉の宇宙空間の飛行シーン。ここでは竹内さんがナレーションを担当しており、「ぼくは」と〈はやぶさ〉視点の1人称で語るのですが、〈はやぶさ〉のけなげながんばりにもう涙腺がゆるまない人はいないでしょう。ガマンせず、たまには老若男女問わず泣いてください。そして、そのCGシーンの数々も重厚な出来映えでした。アクションものとは違ってそんなに激しい動きがないとはいえ、日本映画はあまりCGに予算をかけられないようで、どうにもチープになってしまうことが多い。でも、世界も視野に入れた作品なので、さすがに「トランスフォーマー」とかと比較するのは厳しいかも知れませんが、どこに出してもおかしくないCGでした。

こんな感じで、見所を挙げるときりがないので、前売りで観たら間違いなく超お得です。はっきりいって、2500円とか3000円出しても、それに見合うものが確実に心に残ったり、自分の価値観や人生を変革してくれたりする作品ですから。そういうのって、なかなかお金を出しても得られない経験ですよね。それが得られてしまうのだから、とてつもない作品なのではないでしょうか。

ちなみに、どれだけこの映画に自分を変えられたかをぶっちゃけます。はっきりいって、これを見る直前まで、ロボタイムズの運営で悩んでいました。原稿を書いたり取材したりするのは少しも苦ではないのですが、広告を取れず予算的にまったく成り立っていない状況に、とても悩んでいました。さらに、ロボタイムズの存在が世の中で役に立っているかどうかもイマイチわからないというのが本音で、続ける意味があるのかどうかも常に自問自答している日々を送っていました。ただロボットに関われるのが楽しいという、自己満足の自慰行為的なただの趣味のサイトなのではないかとも思ったりしました(実際、広告代理店業を営んでいる友人には「ただ書くのが楽しいというだけなら、プロのやってることではなくて、アマチュアの趣味のサイトだよね」とズバリいわれました)。

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でも、今回「はやぶさ/HAYABUSA」を観て、「そんなこともうどうでもいいや」と。一度やるといったら死ぬまでやるもんだし、成功は成功するまで諦めなかった人間に訪れるものだし、とにかくロボタイムズを続けよう、と自然にそう思いました。ありがたいことに6月にスタイルを大きく変え、7月はこれまでの最高記録となる訪問者数、訪問回数を記録できたことも後押ししてくれました。ページビューはわずかに及びませんでしたが、1位とともに他の月から見たら突出した記録になりました。でもそうした数値もニュースサイトとしてはまだまだですし、まだまだ改良すべきところはたくさんあるので、これからもがんばります。〈はやぶさ〉と〈はやぶさ〉を運営し続けたJAXAスタッフの皆さんに恥じないよう、ロボタイムズが立派なニュースサイトになるよう努力を続けようと思います。自分が〈はやぶさ〉を開発して運営したJAXAのスタッフで、ロボタイムズが〈はやぶさ〉みたいなものですからね(でも、最後は大気圏に突入しないようにしてまた旅立ちます)。まぁ、でもあんまり重く考えると自縛して動けなってしまうのはこれまでに経験してきたので、肩の力を適度に抜いて長く続けようと考えています。

そんなわけで、「はやぶさ/HAYABUSA」のリポートと合わせて、ロボタイムズの現状報告と決意表明まで行ってしまいましたが、もはや「この程度の状況なんて苦労の内に入らないね!」と思えるようになったほど、この映画は影響力が大きかったのは間違いないです。DVDが発売されるようなので、必ず購入して辛い時は「はやぶさ/HAYABUSA」を観てがんばろうと思わせてくれる内容でした。

あととても強く感じたのは、やはり宇宙の広大さですね。スタッフの中には長い期間の内に定年退職する人もいれば、亡くなる人もいる(それらもきちんと描かれています)。プロジェクト開始時は宇宙科学研究所だったのが、今はJAXA(宇宙航空研究開発機構)と組織が改められたし、〈はやぶさ〉を打ち上げたM-Vももう飛ぶことはない。宇宙を相手にすると、どれだけ時間がかかるのかということがわかる内容でした。それと、自分は自分のことをひねくれ者と思っていたのですが、「はやぶさ/HAYABUSA」にはこんなにストレートに感動できて、なんか物事の考え方まで変わってしまうほどの影響を受けてしまって、意外と純真な幸せ者なんだなーと自分自身に感動できたこともよかったです(笑)。

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