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TOP >  イベントリポート >  記事2010年10月11日-a

CEATEC JAPAN 2010で見たロボットたち-前編
まずは人気者たちの最新2010年バージョンから紹介

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10月05日から9日まで、幕張メッセで行われた、最先端IT・エレクトロニクス展「CEATEC JAPAN 2010」。最終日の9日(土)は無料日となり、また第22回全日本ロボット相撲大会関東大会が開かれたことなどもあって、総入場者数は18万1417名を数えた。出展されていたロボットの内、まずはCEATECの名物的な存在となっているお馴染みのロボットの2010年バージョンを紹介する。このあと、中編として今年初めて披露されたロボットを、後編として直接的にロボットではないが、センサやサーボモータなど要素技術を応用した製品やデモなどを紹介する。また、一部のロボットに関しては、さらに詳しくあらためて個別にも紹介する予定だ。

【村田製作所「ムラタセイサク君」「ムラタセイコちゃん」】

トップバッターは、もはやCEATECになくてはならないロボットから。毎年、CEATECに合わせてバージョンアップしたり、新型となって登場するロボットといえば、株式会社村田製作所の自転車型ロボット「ムラタセイサク君」(以下、セイサク君)と、一輪車型ロボット「ムラタセイコちゃん」(以下、セイコちゃん)。どちらも2010年モデルが9月27日に発表され、特にセイサク君はハードウェア的にも完全新型の3代目となり、正式には「ムラタセイサク君 Type ECO」となった。

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3代目セイサク君は外観こそ大幅なデザイン変更をしていないが、中味は完全に別物。Type ECOの名の通り、省電力化を重視した村田製作所の新技術がいくつも投入されている。それらによって実現した新機能としては、命令がない時は自動的にスリープモードに入ったり、そして赤外線を利用した人感センサで覚醒したり、電力の使用状況をモニタリングできるようにした無線通信モジュールやワイヤレス電力電送システム(村田製作所では、非接触式充電システムをこう呼んでいる)を搭載していたりという具合だ(今年のCEATECのトレンドのひとつが「非接触式充電」だった)。一方のセイコちゃんはソフトウェア的なバージョンアップなどが施された。一輪車によるS字平均台走破というスゴ技を習得している。

【産業技術総合研究所「HRP-4C 未夢」「RAPUDA」】

続いては、独立行政法人産業技術総合研究所(以下、産総研)の青年女性型ロボット「HRP-4C 未夢」。昨年、初音ミクのコスプレで歌っていたことを覚えている人も多いだろうが、今年は特にコスプレはなし。しかし、今回は昨年とは桁違いの、ほとんど人と変わらないような自然な表情と、歌い方を身につけてきたのである。それを実現するために新たに開発された技術はふたつ。歌声合成技術「VocaListener」(通称:ぼかりす)と、表情合成技術「VocaWatcher」(通称:ぼかうお)だ。なお、ぼかりす自体は正確には2008年に発表されており、それをHRP-4Cに今回応用したというわけだ。ぼかうおの発表は10月05日のCEATEC初日となっている。昨年はスタッフが手入力で歌い方やモーションなどを作成してきたわけだが、今回は自動化したことで、非常に自然な感じになったのである。

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ぼかりすは、実際に人が歌って録音した歌唱音声のサンプルから歌い方(声の高さと大きさ)を真似た歌声を、市販の歌声合成ソフトを用いて合成するという技術だ。歌い手のブレスまで識別しており、ちゃんとそれも不自然なく再現しているところもスゴイ。ぼかうおは、歌い手の歌唱時の表情や目の動きなどの録画映像から、HRP-4C用の表情(+頭部の動き)パターンを自動生成するという技術だ。サンプルの歌い手の顔の各部位の運動をベースに、それにできるだけ近い動きを作り出すHRP-4Cの制御コマンドを推定する仕組みである。そして、両者を正確に同期させることで、非常に自然な歌唱を実現したというわけだ。

ただし、この両技術を合わせても、未夢自体に「お」の発音をする時のような「口をすぼめる」動きだけはまったくできないため、そこだけが現時点では人のマネができないところとなっている。なお、デモで使用した音源は、株式会社ヤマハの歌声合成ソフト「VOCALOID2」を利用した説明不要の人気ソフト「初音ミク」(クリプトン・フューチャー・メディア株式会社)。歌い手として歌声と表情を提供したのは、ネット上で活躍している女性ボーカリストのサリヤ人さん。曲名は「プロローグ」だ。

産総研は未夢のほか、上肢に障害のある人向けの生活支援ロボットアーム「RAPUDA」(2009年発表)も展示。安全・安心・安価をコンセプトとしており、ジョイスティックやオートスキャン型GUIとシングルスイッチなど、身体の動く部分で操作できるようさまざまなインターフェースに対応しているのが特徴。機構レベルからの安全確立を実現するため、ヒジ部の回転関節をなくして直動伸縮関節(産総研と株式会社川縁機械技術研究所で開発)を採用し、挟み込みや視野の阻害を防ぐことに成功している。各種センサの二重化、安全認証取得済みの通信モジュール、全モータの総出力制限なども導入し、高い安全性を実現した。車いすに取り付けられた状態での展示だったが、取付や取り外しが可能。また、安価な部品を多用することで、製品化時の販売価格にも配慮した形だ。スペックは、7自由度(アーム6自由度+ハンド1自由度)、全長40~100cm、全高約75cm、重量約6kg、可搬重量500g。

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【日産自動車「EPORO」】

CEATECというとあまり自動車メーカーは出展しないのだが、2006年より唯一出展しているのが日産自動車株式会社だ。今回は、12月から販売を開始する電気自動車「リーフ」や、ソーラー発電システムを設置したスマートハウスで構成したリアルゾーンと、EVが街を走る2030年のゼロ・エミッションモビリティ社会を想定したフューチャーゾーンの2種類のステージを用意。フューチャーゾーンでは、群走行するぶつからないロボットカー「EPORO」(エポロ)の2010年バージョンが披露された。今回はソフトウェア的なアップデートとなっている。

EPOROはレーザーレンジファインダで障害物などを認識し、またEPORO同士で通信しあうことで、群れが分岐して再び合流する時でも衝突回避のために譲り合うといった群制御を行なえる機能を持つ。2010年バージョンは、それに加えて標識を認識するという機能が持たされた。高効率の発電用ソーラーパネルとバッテリを備えた「ソーラーの木」で発電した電気を得られる非接触式充電レーン(走行しながら充電できる)を、通常のレーンと状況に応じて使い分けて走行。また、非接触充電レーンと通常レーンの合流地点では、実際に譲り合って衝突を回避する様子も披露された。

【日本電気「PaPeRo」】

日本電気株式会社の小型コミュニケーションロボットの「PaPeRo」は、企画コーナー「デジタルヘスケア・プラザ」の中で2体が出展。PaPeRoは、さまざまなソリューションのインターフェースとして各種展示会で披露されてきたが、今回は新ソリューション。インテルが中心となって提唱している、ICTを利用した健康管理機器用の統一規格「コンティニュア」のインターフェースとして用いるというの「デイリー・ヘルスケア」と「シニアサポート」だ。コンティニュア規格に対応した血圧測定器とPaPeRoを接続し、さらにクラウド(インターネット)を利用することで(今回は、UQコミュニケーションズ株式会社の「WiMAX」を利用してインターネットに接続)、測定した血圧から診断をくだしてアドバイスをしてくれるというシステムである。

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試しに自分で血圧の測定してみたところ、今回は幸いなことに上限も下限も一応セーフの範囲内だったので、「このまま健康を維持してね」というアドバイスだった(ムービーは、途中でPaPeRoがしゃべっていないところをカットして編集)。お年寄りの健康管理用には、こうした小型のコミュニケーションロボットを用いるのは、非常に適しているように思われ、ロボットの家庭への普及は、まずこうした辺りから始まるのではないかというのが、かなり明確になってきたような感じだった。

【公立はこだて未来大学「イカロボット3号」・函館工業高等専門学校「イカロボット4号】

最後は、昨年も出展していたが、当サイトでは初登場ということで、北海道の「公立はこだて未来大学」と「函館工業高等専門学校」の生徒たちが代々開発している「IKABO」(イカロボット)を紹介。函館名物の「イカ踊り」を踊れる巨大イカ型ロボットを開発して地域振興のシンボルにしようという構想が2005年に考案され、「ロボットフェス・インはこだて」市民の会が組織され、未来大と函館高専も参加。地元企業などと取り組む「イカロボット」プロジェクトがスタートした。主にハード面を函館高専が、ソフト面を未来大が担当し、2006年に1号の試作機ができあがり、2007年に正式に発表された。1号は2.2mの全高を有する巨大さだが、最終的には5mを目指しているという。

ちなみに現在は、未来大と函館高専が各自でイカロボットを開発しており、今年も愛想を振りまいていた3号は未来大が開発、展示されていた4号は函館高専となっている。3号は10自由度(片腕4×2+片目1×2)を持つ。また、未来大は5号を製作中で、函館高専は6号という名前は付けないそうだが、イカロボットシリーズを継承する新型を開発中ということだ。

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