EVOLTA WORLD CHALLENGE III 東海道五十三次
3代目「エボルタトラベラー」を壮行会でお披露目
パナソニックの乾電池「EVOLTA」(以下、乾電池を指す場合はEVOLTAと英語表記)のイメージキャラクターとして、毎年ギネス級の過酷なチャレンジをしているロボット「エボルタ」くん。今年も、ロボットクリエイター兼東京大学特任准教授の高橋智隆氏が新型ロボットを設計・開発。「EVOLTA WORLD CHALLENGE III」は、日本編ということで「東海道五十三次」に挑戦する。行程は、23日に東京・日本橋からスタートし、安全性の問題で迂回路を通る場合もあるが、基本的に旧東海道を通り、1日1次のペースで(距離が短いところは2次の場合も)移動。何十日もかけて約500km先の京都・三条大橋でゴールする予定だ。
ちなみに23日のスタートは天候によっては順延する可能性もある。同じく、道中も雨天の場合は走らない日もあるということだ。もう台風シーズンに入っていてもおかしくないわけで、休日は確実に発生するだろうから、ゴールはおそらくは11月半ば以降になるのではないだろうか。23日からスタートする「EVOLTA WORLD CHALLENGE III 東海道五十三次 充電の旅キャンペーン」は、12月10日までという日程だが、さすがにそれまでには確実に走りきっていることだろう。なお、道中の小学校や名古屋のCOP10の会場では、電池教室を開催することが予定されている。
スタート前日の22日には、日本橋に近いベルサール八重洲で壮行会が行われ、3代目エボルタくんこと「エボルタトラベラー」の実機が披露された。エボルタトラベラーは、すでに公式サイトで発表されているイメージの通りで、今回動力源として搭載する新発売の充電式EVOLTAのイメージカラーである緑をまとっている。そして後ろに大八車(荷車)を引き、エボルタくん本体はハムスターリング型の車輪の中に収まっているという形だ。なお、駆動輪はそのエボルタくんのいる車輪で前輪駆動(大八車は二輪なので、エボルタトラベラーは三輪車)。エボルタくんはその中で脚をバタバタと前後に動かすので、車輪を回しているようなイメージに見えるというわけである。大八車を引いている理由について高橋氏は、「東海道という長い歴史を意識した」としている。
搭載する電池は、10月01日に発売を開始する新型の充電式EVOLTAの単三電池「HHR-3MVS」(オープン価格)を12本。大八車に10本積み、エボルタくん自身の背中にも2本を搭載する形だ(ただ、大八車を引いているわけではない)。並列につないで、パワーよりも長時間持たせる仕組みにしている。ただし、公道なので凹凸や段差などはいうまでもなく多量にあるため、それを乗り越えるためのパワーも持たせたという。ルールとしては、1回の充電で宿場町から宿場町までを走り切り、日中に移動している間は、一切充電しない。なお、新型EVOLTAは1600回の充電が可能なので、余裕も余裕で間に合う計算だ。ちなみにこの1600回という回数は、2010年09月01日時点において、容量1900mAh以上の市販ニッケル水素電池での最高回数となっている。次の宿場町にたどり着いたら一晩そこで充電し、翌日の移動に備えるという流れだ。
なお、宿場町の間は長いところで約20kmある。大人の歩行速度は時速4~5km/hなので、休みなしで歩き続けても最低4~5時間はかかる。ただし、エボルタトラベラーは、2009年のル・マン仕様の3倍の時速3km/hほどを出せる。日の出と共にスタートすれば、だんだん冬至に近づいているとはいえ、20kmあったとしてもなんとか走りきれるはずである。速度は、動画をご覧いただければわかるが、予想以上に速い感じだ。
このエボルタトラベラー、もちろんラジコンではなく、ロボット自体が走る。ただし、さすがに公道で長距離を走るため、完全な自律走行というわけではない。赤外線を送信する機器でもって誘導していく仕組みを採用している。その先導役を務めるのが、エボルタくんのヘルメットを被った4姉妹「エボルタ シスターズ」というわけだ。この期間中に三十路を迎えるという長女リカさん、エボルタ シスターズのリーダーである次女のミサさん(昨年のル・マンチャレンジに登場したエボルタさんに似ている説があるらしい)、背筋がピンとして姿勢の良さが特徴の三女はアヅサさん、そして四女がVITA(ビータ)さんだが「オツカレーライス~!」などと会場で笑いを取りにいっており、ネタといい名前といいよしもとの女性芸人とどうも似ているようである。
ちなみに、エボルタくん自身が収まる駆動輪はクリアパーツでできており、エボルタくんが握っている大八車のハンドル部分には赤外線受光部がある。エボルタシスターズは、キャスター付きの赤外線送信機を転がしながらエボルタトラベラーに後を着いてこさせ、それを4人で交代交代行っていくというわけだ。道中はエボルタシスターズの誰か1名だけが誘導し、残りの3人は当然交代地点で待機しているわけだが、ちゃんとシスターズをバックアップする安全要員が2名ついているので問題ない。さらに、カメラクルーが2名ついて5人1チームで常時行動するそうである。安全要員がいるから大丈夫だとは思うが、VITAさんは極度の方向音痴らしいので、明後日の方向に行かないようご注意願いたい。
エボルタトラベラーは、交差点などの歩道と車道の段差を乗り越えられ、坂路も最大斜度15度から18度までの急坂を登っていける。東海道には箱根や鈴鹿など、人が登るのも大変な峠道があるのは知っている人も多いはず。そのためボディやフレームの素材として、カーボンやプラスティック、チタン合金を使用して軽量化を施し、電池への負担を減らしているという。公道なので信号待ちなどにより、ストップ&ゴーを繰り返すため、少しでも重量を減らすことが発進時の負荷を軽くできるというわけだ。また、段差や急な坂道はもちろんだが、石ころやゴミでさえ大きな障害になる可能性がある。昨年のサルテ・サーキットでは事前にコースの掃除ができたそうだが、今回はそうしたことはできないため、これまでにない過酷なチャレンジとなりそうだ。
さらに、これまで説明した以外の移動時のルールとしては、横断歩道では到着した時点で青だったとしても必ず1回停止し、次に青になった瞬間から渡っていくようにするという。途中で赤になってしまう危険性を防ぐためである。また、小雨は状況によりけりだが(あともう少しで次の宿場町というような具合は走り続ける)、基本的に雨天時は視界の問題などで安全性が確保されない可能性があるので、走行は行わない。途中から急な大雨になった時は、そこで中断して翌日(晴れていたら)同じ地点から再開する仕組みだ。また、夜間も安全性の面から走行は行わないとしている。そのほか、宮宿~桑名宿間についてはかつては船で移動していたそうだが、国道1号線を基本ルートとして地上を走行するという。そして、ここだけ特別に2日間をかけて走行する計画となっている。そのほか、歩道橋などの階段、踏切などの安全運営のために警察から指導のあったヶ所に関しては、スタッフが手で持って移動させるそうだ(ちなみに、全行程の管轄の警察すべてに許可を得ている)。
また、基本的にEVOLTAの1回の充電での長寿命性と1600回も繰り返せるという充電回数の面での長寿命性を実証するための挑戦なので、万が一機体が故障した場合は予備のものを使用するが、電池自体はそのまま使い続けるとしている。
今回の挑戦に際して高橋氏は、「今回は一般道での挑戦なので、本当に色々なトラブルがあるかと思います。でも、ロボットが公道を走る日が来ると私は信じていまして、今回のチャレンジは、実証実験の先駆けのようなものだと思っていますので、がんばります」とコメント。昨年の24時間連続走行に比べれば1回の走行時間は短いかも知れないが、やはり一般道である。どんな事故やトラブルが生じるかわからない。これまでにないあまりにも過酷な挑戦だが、エボルタ シスターズに先導してもらって、無事500kmを走破してもらいたい。
なお走行の様子は、公式サイト上でUSTREAMを使用しての生中継を実施。ぜひ応援してあげてほしい。