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TOP >  学術・教育 >  学術 >  記事2010年09月17日-a

fuRoの古田貴之所長が最新ロボット「core」を発表
世界最大級の二足歩行ロボット・可搬重量は100kg

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千葉工業大学 未来ロボット技術研究センター(fuRo)は9月16日、全長1.9m・重量230kg・可搬重量100kgという世界最大級の二足歩行ロボットの脚部のプロトタイプ1号「core(コア)」を発表した。fuRoは、このcoreのために、数々の要素部品・機器を開発。絶対角度センサを組み込み、電磁ブレーキとハイブリッドの最大3000Wの大型モータシステムを各関節(片足6×2)に搭載し、また着地時の衝撃を緩和する衝撃吸収機構を両足部に装備することなどによって、この巨大ロボットは驚くほど静かにそして滑らかに歩行するところを発表会で披露した。

fuRoでは、平成21年度より「fuRo搭乗型二足歩行ロボットプロジェクト」を進めている。脚移動式モビリティを未来の乗り物として、実開発することをミッションとしたプロジェクトだ。同プロジェクトでは2012年に搭乗型二足歩行ロボットを発表する予定で、その脚部のプロトタイプ1号として発表されたのが、今回のcoreいうわけである。なお、そのほかにも平行してふたつのプロジェクトが進められており、coreの開発で培われた技術や開発された機器を応用して、中型サイズのロボット「PJ」(仮称)および「パーソナルモビリティ」(仮称)を2011年に開発するとした。

現在、シニアカートなど電動車両が高齢者の足として利用が広まりつつあるが、fuRo搭乗型二足歩行ロボットプロジェクトでは、それに自動操縦技術や不整地移動能力を付加し、来る高齢化社会において環境に優しく、なおかつ安全な乗り物となるよう開発を進めている。記者会見で古田氏は、自らが14歳の時に「余命8年」といわれるような脊髄をウイルスに冒される車いす生活の難病を送ったことがあり、その時に車輪が脚であったらという思いを抱き、それをずっと追いかけ続け、やっと形になってきたと語った。

さらに、福祉用途として人の日常生活や移動をサポートするアームや脚部を実現するためには、ハイパワーであると同時に、省エネルギーでもある駆動システムとその制御システムが重要となる。core開発のポイントは、coreそのものだけでなく、coreのために開発された各種要素部品を応用することで、ロボットシステムはもちろん、今後の実用化が期待されている多様な対人サービスを想定した福祉機器を開発できるようになることとする。fuRoでは、今後もライフイノベーションとグリーンイノベーションの促進を目指すとした。

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今後の予定としては、さらに順次開発中の数々のロボット用の要素部品(センサ、モータ、駆動システム、制御用コンピュータユニットなど)の実用化と事業化を行うとする。開発中の搭乗型二足歩行ロボットに関して古田氏は、技術のランドマークと位置付けており、そこから派生するさまざまな技術や要素部品を、産業界と連携して積極的に実用化・事業化することで、ロボット産業全体の活性化を目指すとした。なお古田氏は、今回のプロジェクトで連携している企業は5社以上に上り、合わせて10のプロジェクトが進行しているとも語っている。

coreの各パーツについては、まず気になるのがモータの性能や仕組みだろう。間接駆動用の大型モータシステムは定格1200W、最大3000W(シニアカートや電動スクーターのモータは600W以下)の大出力プラシレスモータである。モータ、減速機、電磁ブレーキ、絶対角度センサからなる関節駆動ユニットと、モータ制御駆動ユニットから構成されている形だ。またモータとハイブリッドの電磁ブレーキが何をなすかというと、静止時にモータの力を使わずに各関節を支えるのに使用する。通常、二足歩行ロボットは静止時も各関節のモータを駆動して力を発生させることで自立しているのだが、当然、その間も電力を消費してしまうという大きなデメリットがあった。そこで、静止時は電磁ブレーキを利用することで、モータが消費するのと比べて電力消費を抑えられるようにし、省エネ化を図ったというわけである。ちなみに、物理的なブレーキも搭載されており、電源を落として完全に静止している時は、そちらも使用しているそうだ。

そして足部の衝撃吸収機構だが、これは230kgのロボットが静かになめらかに歩行するために必須の装置で、車でいうところの路面の凹凸からの衝撃を和らげるスプリング/ダンパーユニットと等しい。足裏の接地面には、接地した瞬間に多大な反力が返ってくるのだが、230kgともなると、かなりの衝撃となる。もし人が搭乗した場合、ケガをしかねないようなショックが脊髄を襲うわけだ。そこで、ショックアブソーバーとして、独立可動型吸収器4台と並列可動型吸収器1台で衝撃吸収機構を構成。衝撃の80%を吸収できるようにしたのである(定点高さ落下試験による測定)。とても230kgの巨体とは思えない歩行での接地時の静かな様子は、ぜひ動画でご覧いただきたい。

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なおcoreという名称は、未来の社会や世界の状況に合わせ、今回のプロジェクトの技術が応用されることを期待し、またこの技術が「核」となり今後さまざまなシーンに合わせたロボットが生まれていくように、そんな願いや思いを込めたとしている。

それから、これまで搭乗型二足歩行ロボットというと、日本製だとトヨタが愛・地球博で披露した「i-foot」がある。ただし、こちらはスペックが公表されていないので、記者が見た感じでいうしかないのだが、coreとどっこいどっこいの感じである。ただし、足だけの比較だと、おそらくcoreの方が大きいのではないだろうか。coreにコックピット(シート)部分を搭載したら、i-footよりも大きくなるはずだ。もちろん性能面に関しては、約5年の差があるわけで、coreの方が上であることは間違いないだろう。

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