トヨタのスマートグリッド技術への挑戦
「スマートセンター」と「六ヶ所村実証実験」
トヨタ自動車株式会社(以下、トヨタ)は5日、スマートグリッド技術への取り組みの一環として、住宅・クルマ・電力供給事業者とその使用者をネットワークし、エネルギー消費を統合的にコントロールする独自のシステム「トヨタスマートセンター」(以下、TSC)を開発したことを発表した。
TSCは、プラグインハイブリッド車(PHV)や電気自動車(EV)、住宅内のエネルギーマネジメントシステム「HEMS」(Home Energy Management System)を装備したスマートハウスなどを、複数棟(エリアごと)情報面で統合し、制御・運用するシステムだ。
PHVやスマートハウスが使用するエネルギーと、電力供給事業者からの電力、自然エネルギーによる自家発電電力などにより供給されるエネルギーを合わせ、需要と供給全般を管理調整。それらの情報は、コミュニティの管理者向けに可視化技術「トヨタスマートビジョン」(以下、TSV)を用いて表示。ユーザー向けにはHEMSモニターやスマートフォンなどを使って提供する。スマートフォンを介することで、ユーザーは乗車時や屋外でもPHVやスマートハウスの状況を確認でき、遠隔操作も行なえる仕組みだ。
扱う情報は、PHVやEVなど電力を蓄えている車両から得られるバッテリ残量や、HEMSから得られる住宅内の電力消費量、太陽光発電による発電量、家庭用蓄電池の蓄電量、エコキュートなどの給湯器の貯湯量など。さらにそれらに加え、気象予測データや電力供給事業者の時間帯別料金なども合わせている。こうした情報を集積した上で、各居住者の生活パターンに応じた最適なエネルギー消費計画を立て、PHVやEVの充電時間や空調のオン・オフ、住宅の家庭用蓄電池やエコキュートなどを効率よく自動制御し、生活圏全体におけるCO2排出量と居住者の費用負担を最小化するよう調整する仕組みだ。
なおトヨタは、同システムを用いることで、人とクルマと住宅をネットワークし、低炭素社会の実現とユーザーの快適でクリーンなトータルライフのサポートを目指しているとした。
また同システムは、トヨタに加え、日本風力開発株式会社、パナソニック電工株式会社、株式会社日立製作所の4社が協力して9月16日からスタートした、青森県上北郡六ヶ所村大字尾駮(おぶち)における「六ヶ所村スマートグリッド実証実験」で、実際に利用されている。なお、同実験は、世界初の大規模蓄電池併設型風力発電所を活用した住民居住型のスマートグリッド実証実験だ。テレマティクス車載器「G-BOOK BIZ」(トヨタ製)を搭載した「プリウス プラグインハイブリッド」(2012年発売予定)8台、スマートハウス6棟などを用意して実際に人が生活して実証実験を重ねており、2012年07月までを予定している。
同実証実験での各社の取り組みだが、トヨタは、スマートハウス、PHVの運行管理システム、トヨタスマートセンターの実証を行う。スマートハウスはトヨタホーム株式会社によるもので、株式会社デンソー製の自家蓄電池(最大容量5kWh、最大出力1.5kW)付きHEMS、エコキュートなどからなる。また電力状況の可視化ツールであるTSV、ユーザー向けのHEMSモニター、スマートフォン、車載ディスプレイオーディオの活用を実証していく。
日本風力開発株式会社は、1500kWタイプが34機2008年05月から稼働している青森県上北郡六ヶ所村の二又風力発電所(管理は、同社の関連会社の二又風力開発)を開発し、今回太陽光発電と共に自然エネルギーでの発電に使用する。自然エネルギーの弱点である発電量の不安定さをなくすため、グリッド内の電力需要量をコントロールするHUB蓄電池(地域用蓄電池)を設置し、供給側の調整と需要側(スマートハウス)の電力負荷コントロールとの協調によるCO2フリーの電力需給制御システムを構築していく。スマートハウス側では、発電状況、居住者の電力使用状況、行動パターンなどに基づき電力利用を計画・コントロールするエネルギーマネジメントシステムを設置し、快適性を保ちながら供給側と協調するシステムを開発していく計画だ。
最後に日立製作所は、同社が得意とする系統制御技術、自動検針技術を適用し、また自然エネルギー発電と蓄エネルギー装置の導入することで、自然エネルギーを最大限に利用するための蓄エネルギー制御と負荷制御技術の検証を行っていく。連係点潮流、地域用太陽光発電監視、スマートメーターによる各スマートハウスの消費・発電電力量を測定し、HUB蓄電池制御を行なう電力コントロールセンターを開発し、提供していく形だ。グリッド内の主要自然エネルギー発電設備として100kWの太陽光発電設備も提供している。実運転データに基づく特性評価を実施して、電力制御の性能向上に役立てるとした。