2輪倒立振子でのシーソー上1秒停止も遂に出た!
「ETロボコン2010チャンピオンシップ大会」リポート
日本の産業競争力にとって重要な「組込みシステム」分野における、技術教育をテーマとして、ほぼ1年をかけて行われている「ETソフトウェアデザインロボットコンテスト」、通称「ETロボコン」。今年で通算9回目となる、2010年チャンピオンシップ大会が、12月01日にパシフィコ横浜において、ET2010組込み総合技術展と併催する形で開催された。
今年は、北海道と沖縄が昨年属していた地区からそれぞれ独立し、全国10地域で地区予選を実施し、合計343チームが参加(1チーム最大4名)。そこで表彰台に上るなど優秀な成績を収めた40チームが選抜され、チャンピオンシップ大会は行われた。その栄えある頂点に立ったのは、南関東地区(神奈川県)でも優勝した企業チーム「AEK RUNNER 10」(アンリツエンジニアリング株式会社)。なお、南関東地区はこれまで優勝チームを出したことがないということで、昨年から地区挙げて、チームの垣根を越えて優勝に取り組んできたということだが、準優勝と第3位も同地区のチームが獲得し、表彰台独占を達成。大躍進となった。
今年のレギュレーション面での特徴は、まずハードウェアがすべて「レゴ・マインドストームNXT」に統一されたことがある。バッテリ(全チームパナソニックのEVOLTAを使用)も含めて、すべて同じNXTを利用した二輪倒立振子型のロボットで競われる形となった。光センサ周辺に遮光スカートを装着する以外は、ハードウェアの分解・改造は一切禁止で、あくまでもソフトウェアの完成度で、ロボットの走行の速さと正確さを競う内容となっている。競技は、2チームが同時に、それぞれ特徴の異なるインコースとアウトコースに分かれて走る。インとアウトを入れ替えて計2回走り、競技部門はそのタイムの合計によって順位を決定する仕組みだ。
コースはインコースとアウトコースでレイアウトが異なり、また複数のポイントで分岐と合流がある。基本的には、白地に黒のラインが描かれたライントレース系の見た目で、1周は約20m。ただし、ラインをトレースして順走(反時計回り)することが絶対条件ではなく、倒れさえしなければどんなにショートカットをしようが、逆送しようが構わない。順走方向にスタートし、同じく順走方向にゴールしさえすれば、OKなのである。とはいっても、ボーナスタイム(タイムを減算できる)を得られる「難所」や中間ゲートなどを通過しないと圧倒的に損をするので、基本的にはきちんと周回するチームの方が多い(ショートカットをするチームは多かったが、逆走を狙ったのは1チームのみ)。
その難所だが、両コース共通なのが、ゴール後のガレージ・イン(20秒)。難所ではないが、中間ゲートを通過すると、両コースとも10秒のボーナスタイム。あとはコースごとに異なり、アウトコースには、シーソー通過(30秒)およびシーソー上停止(80秒)、階段通過(40秒)がある。インコースは、ミステリーサークル通過(60秒)だ。ミステリーサークルとは、4種類の中からくじで選択されたコースを、ロボットが指定通りのルートで通過すれば成功となる。ただし、ロボットはコース前半(第1コーナーを抜けた先)の「エニグマコーディング」と呼ばれるエリアで、しっかり読み取らないと、どのコースを通るのかがわからない。そのエリアには2リットルのペットボトル3本まで立てられており、その本数と並び方でどのルートかを設定しているのだ。それをロボットは超音波センサを駆使して読み取り、中間ゲートの先で分岐するミステリーサークル内を正しいルートで抜けると、成功となる。
速いチームは40秒台で1周するので、アウトコースの場合、パーフェクトに決めると、-130~-140秒というマイナスのタイムも出てしまうのだが、上位進出を決めるためには走行タイムが早いのはもちろん、難所やゲートはすべてクリアして得られるボーナスタイムも多くないとならない。ちなみに、シーソー上停止は難易度が非常に高いため、全40チーム中2チームが成功させるにとどまっている。
また、転倒やコース外への転落、ミステリーサークルでのミスコース、そして制限時間2分を経過してしまうとリタイヤ扱い。タイムは、一律2分ということになる(同じリタイヤでも、中間ゲートや難所を多く通過した方が、減算されてそれだけタイムがよくなる)。
そして競技部門と並ぶのが、モデル部門だ。搭載したソフトウェアの設計内容をモデル図で表現し、会場の掲示板にプリントアウトした資料を掲示し、審査するというもの(書き方などもフォーマットがあって、もちろん審査ポイントとなる)。今年は、新たなチャレンジとして、「追加課題」が設定された。題目は、「平行性設計」となっている。
競技部門とモデル部門それぞれ順位付けされて表彰されるが、最終的にはその両方を合わせた形で評価が行われ、総合優勝が決まる。いうまでもないが、どちらかだけがよくても総合優勝は無理で、AEK RUNNER 10は競技部門で3位に入り、モデル部門でも表彰台こそ逃しているものの、上位に付けていたため、トータルでの優勝となったというわけだ。なお、総合および各部門の表彰台は以下の通り(モデル部門は4チームが表彰台)。
【総合順位】
優勝:36 AEK RUNNER 10(南関東/アンリツエンジニアリング株式会社)
準優勝:17 こっぺぱん♪(南関東/神奈川工科大学 吉野研究室)
第3位:24 i-K∀S(南関東/株式会社日立アドバンストデジタル)
(特別賞)TOPPERS賞:26 チームHULAパンダ(東京/株式会社日立超LSIシステムズ)
【競技部門順位】
第1位:37 SAGA組込ソフト研究会(九州/個人チーム)
第2位:17 こっぺぱん♪(南関東/神奈川工科大学 吉野研究室)
第3位:36 AEK RUNNER 10(南関東/アンリツエンジニアリング株式会社)
【モデル部門順位】
エクセレントモデル:29 HELIOS(東海/株式会社アドヴィックス)
ゴールドモデル:23 田町レーシング(東京/オージス総研 組み込みソリューション部)
シルバーモデル:40 サヌック(東海/明電システムテクノロジー株式会社)
シルバーモデル:27 青大ロボコン研MAX(東北/青森大学ソフトウェア情報学部)
また来年も今年同様に開催されることが決定しており、北海道、東北、北関東、東京、南関東、東海、北陸、関西、九州、沖縄の全国10地区で春先の実施説明会から始まり、技術教育や試走会などを秋まで行い、その後、地区大会、そして初冬にチャンピオンシップ大会という流れだ。