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第11回国際宇宙ロボットコンテスト・リポート
異星人の兵器襲来!? 今年は多脚型が印象を残す

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8月29日に福岡・ロボスクエアで開催された、第11回国際宇宙ロボット(火星ローバー)コンテスト。審査委員長として、JAXA研究開発本部未踏技術研究センターJAXA宇宙教育リーダーの小口美津夫氏が招待されるなど、日本の宇宙開発研究者も注目するコンテストである。今回は50台(チーム)のエントリーとなった。

そうした中で今回目立ったのが、多脚型ローバーの登場だ。最近、ホビーロボットのトレンドとして多脚型が脚光を浴びてきているが、同コンテストにもそれが波及。一般の観客にとっても、動物や昆虫のように4本、6本といった複数の足をシャカシャカと動かして移動する様子は、地球製の探査ロボットというよりは異星人の兵器のようなイメージで、インパクトがあったようである。

行われた競技は、大別してコントロール部門の「MARS CHALLENGER」と、自律制御部門の「MARS CHALLENGER AUTO」の2種類。さらに、MARS CHALLENGERに関しては「リモートコントロール(有線)」、「ラジオコントロール(無線)」、そして今回から新設された「アンリミテッド」(リモコン、ラジコン両部門に収まらない規格外部門)の3種類に分かれて実施された。なお、多脚型はアンリミテッド部門に登場した。

MARS CHALLENGERは、火星に見立てたフィールド上を、標本を回収しながら障害物を避けつつゴールを目指すというもの。制限時間は5分で、それ以内に完走できれば、最後には地球と交信を試みるパフォーマンスも行なえるというルールだ(ここまで到達すると、さらにオリンポス山山頂への登坂に挑戦できるようになる)。競技としては、ゴールまでのタイムに加えて、標本採取による得点も競う形だ。リモートコントロール部門は30台、ラジオコントロール部門は3台、アンリミテッド部門は8台が参加して競われた。各部門の入賞者は、以下の通りだ。

画像02 【リモートコントロール部門】
優勝:でんぐりん
準優勝:田舎の中の都会
3位:銀閣

【ラジオコントロール部門】
優勝:SASAKITA-01
準優勝:SASAKITA-02
3位:マーズ・クローラー

【アンリミテッド部門】
優勝:GRATAN
準優勝:ダイナスターズ
3位:マーズ・ペンギン

そして、自律制御部門のMARS CHALLENGER AUTO。こちらは、コントロール部門よりも小さいフィールドを使用する内容となっている。ローバーは赤外線センサーやタッチセンターを駆使して、障害物を避けながら3分以内にゴールを目指すのである。こちらは10台が参加し、入賞者は以下の通り。

【MARS CHALLENGER AUTO(自律部門)】
優勝:HIBISCUS
準優勝:フロンティア
3位:田舎の中の高層ビル

さらに、全参加ローバーの中から選ばれる、同コンテストで最も名誉ある賞が、「火星ローバー大賞」。成績だけを見るのではなく、アイディアやオリジナリティなど総合的な観点から評価する賞だ。こちらは、コントロール部門の「BTX2-1ヌム」が受賞した。

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今後は、多脚型が増えそうな気配を見せた今大会。ローバーのスタイルとして、従来のクローラ型・車輪型が有利なのか、多脚型が有利なのか、それとも多脚+車輪といった複数の方式を兼ね備えた機体(その分重量が増え、機構が複雑になるが)が、機構をフィールドの状況に応じて使い分けるのがいいのか。多脚型は、平坦面での長距離移動に関して速度的な面ではクローラ型や車輪型に劣るものの、ひっくり返らないという安定性では決して引けを取っていないし、不整地踏破能力に関してはフィールドにもよるが上回るところもある。ローバーというよりは、異星人の兵器的なイメージがあるものの、今後台数が増えてきそうな気配だ。

ちなみに、日本の次の月面探査計画では、探査ロボットが月面上で移動して探査を行なうことが考えられているが、現在はクローラ型が検討されている。ただし、今後このコンテストでもし多脚型がクローラ型以上の有効性を証明するようなことになってくれば、多脚型も考慮されるようになる日が来るかも知れない。そうした点からも、国際宇宙ロボットコンテストは、次のステージに入ったといえよう。参加選手の皆さんには、ぜひ日本の宇宙計画に影響を与えるほど強烈なローバーを製作していただき、1年後の第12回大会も大いに賑わせてほしい。

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